『お腹一杯になったね、ポッチャマ』

「ポチャー!」



レストランを経営している事もあってか、デントさん達の作った朝食はとても美味しかった。ポッチャマも満足した様子で、時折"ケプッ…"と小さな曖気を出している。しかし、その姿がポッチャマである所為なのかとても可愛らしく見えてしまう。











朝食を食べ終わった後、私は一旦部屋に戻りデントさんが来る予定の13時まで時間を潰す事にした。…といっても、これと言ってやる事というのはなく、ただベッドに腰を下ろしてボーッとしているだけだった。ポッチャマなんて、お腹一杯になって気持ち良くなったからか、また寝ちゃってるし…。



『暇だなぁ…』



もし、デントさんに助けられた時にあのままデントさんと別れていたら、今頃どうしていただろう…?

プラズマ団にポッチャマを盗られて、どうしようもなくなっていたのかな…?それともプラズマ団から逃げ切れて平凡な旅を続けていたのかな…?

想像すれば想像する程、色々な憶測ばかりが浮かんでしまう。兎にも角にも今こうしてポッチャマと一緒に居られるのもデントさんのお陰には間違いない。



(…――何だか私も眠くなってきたな、)







*****




「…――さん、ナマエさん」





(…――ん?誰かが呼んでる…?)



重い瞼を薄っすらと開けば、目の前にぼんやりと浮かぶ一人の人物。



「ナマエさん、起きて」



時間が経過すると共に、次第にはっきりとしていくナマエの視界。目の前の人物はデントだった。



『デ、デントさん――…ッ!』





…―――ゴチンッ!




目の前の人物がデントである事に気付いたナマエは慌てて身体を起こそうした。…が、目の前に居るデントの額に見事打つかってしまった。




「…――ッ!こ、この痛みは…刺激が強いスパイスの効いたテイストだ、な…」

『…ッたぁ…』




ナマエとデント、二人して自身の額を手で押さえ痛みに耐えていた。何とも間抜けな状況だ。



『ゴ、ゴメンなさい…』

「いや、良いんだ。僕の方こそ驚かせてしまってゴメンね」

『考え事してたら、いつの間にか寝ちゃってたみたいで…』

「考え事?」

『はい。もしデントさんと森で別れてたら、今頃どうなってたのかなーって…』

「成る程ね。ナマエさんはどうなってたと思う?」

『えー…と、プラズマ団にポッチャマ盗られちゃってたのかな…とか?』

「嗚呼、有り得るかもしれないね」

『ですよねー…』

「でも、僕なら無理矢理でもナマエさんをジムに連れて行ったかな」

『え…?』



デントの言葉に少しだけ目を見開くナマエ。

一体どういう意味なのか聞こうかと思ったが、私よりデントさんの方が少しだけ行動が速かった。



「さて、約束の時間も過ぎた事だし…そろそろ行こうか」

『え…?あ―…』



「約束の時間」と言われ、時計の掛かる壁側に視線を向けるナマエ。既に時刻は13時を過ぎていた。



『すみません、寝坊ですね…』

「気にしなくていいよ。それよりポッチャマはまだ寝てるみたいだけど…?」

『本当だ…、ポッチャマはボールに戻します』



鞄からポッチャマのモンスターボールを取り出し、ボールをポッチャマに向ければ赤い光がポッチャマも全身を包み込んだ。



『このままボールの中で寝かせておきます』

「そうだね、その方が良いよ。無理に起こすのも可哀想だしね」

『あの、デントさん…?』

「ん?」

『これから、何処に行くんですか?』



約束はしていたものの、デントさんからは未だ行先や目的等は知らされていなかった。…というか、聞いても「デート」なんて言われて逸らかされたのだ。もう一度聞いてはみたが答えてくれるのだろうか…?



「それは―…」

『それ、は…?』

「着いてからのお楽しみさ」



(…――嗚呼、聞いた私が間違いだったのかもしれない…)



「兎に角、僕に着いて来て貰えないかな?」

『わ、分かりました』




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