デントさんが部屋を出て行った後、私は疲れた身体を休めるべくポッチャマと一緒に床に就いた。初日の疲れが相当溜まっていたのか、夜中に一度も目覚める事なく熟睡する事が出来た。











翌朝、ナマエは初めてサンヨウシティでの朝を向かえた。窓越しにマメパト達の鳴き声が聴こえてくる。



『ん…、眩し―…』



カーテンの隙間から差し込む朝の日差しが丁度顔に当たれば、とても眩しく感じてしまい反射的に毛布を頭の上まで摺り上げた。ポッチャマは未だナマエの腕の中でスヤスヤと寝息を立てている。



「ポッチャマってば、気持ち良さそうに寝ちゃって…」



ポッチャマの寝姿を暫く眺めていると、"コンコン"と部屋の扉をノックする音が室内に響いた。



「ナマエさん、起きてますか?」

「は、はーい…」



ナマエが返事をすると同時に扉が開く。それに合わせてナマエもベッドから上体を起こした。勿論、未だ気持ち良さそうに寝ているポッチャマを起こさぬように気を配る。



「まだ寝ていらしたのですか?」



部屋に訪れたのはコーンだった。コーンの左手には冷水と思われる物が入ったピッチャーとグラスがトレーの上に乗せられている。



『いえ、少し前から起きてました。ただ、朝日が眩しくて…』

「此処は一番日当たりが良い部屋ですからね」

『ちょっと眩し過ぎるような気もしますけど…』



ナマエはベッドから両足を出し、床に着けると傍で寝ているポッチャマの小さな身体に毛布を掛け直す。その動作に自然と目を向けるコーン。布団の上でスヤスヤと眠るポッチャマの姿にコーンは思わず目を丸くした。



「ナマエさん、そのポケモンは…」

『あ、この子ですか?この子は私のパートナーでポッチャマって言うんですけど…知ってますか?』

「ええ、勿論。ただ、実際に目にしたのは初めてです」

『そうなんですね。…というより、まだ寝ててゴメンなさい。後で起きた時に改めてポッチャマから挨拶させますね』

「いえ、大丈夫ですよ。お気になさらずに」



コーンは爽やかな笑顔をナマエに向けると、ベッドの脇に置かれたテーブルに持っていたトレーを置きグラスに冷水を注いだ。



「さぁ、どうぞ」



冷水の注がれたグラスをナマエへ差し出すコーン。ナマエはそのグラスをそっと受け取った。



『有難うございます、頂きますね』



コーンさんが用意してくれた冷水を少し味わいながら、ゆっくりと喉へ流し込んだ。普段、飲む水とは少し違って癖もなくスッキリとした味に『美味しい…!』と自然に声が漏れてしまった。



「水道水は一切使わない主義ですから。それに水に拘れば拘る程、料理や紅茶も美味しくなるんですよ」

『わぁ、流石ですね…!水の事なら何でも知ってるんですよね?』

「ええ、勿論です。水タイプのポケモンの事にも詳しいですよ?」

『あ、そっか!コーンさんは水タイプの使い手でしたね』



(あ、ということは私と一緒だ…。よく考えたら、ポッチャマも水タイプ…)



「ナマエさんとは何かしらの御縁がありそうですね」

『え?』

「いえ、此方の話です。それより朝食を用意していますのでポッチャマが起きてからでも構いませんから居らして下さいね」

『は、はい…!有難う御座います』

「では、また後程」



コーンは冷水の入った容器とグラスをそのままにナマエの部屋を後にした。



(コーンさんの言ってた"縁"って一体何の事なんだろう…)



コーンの言葉が胸に引っ掛かりつつも、支度をすべく先ずは顔を洗いに洗面台へと向かった。




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