『よーし、いくよー!』

「ヤナーッ!」

「ヒヤッ!」



ナマエが握ったホースの先から勢い良く飛び出す水。向けられたホースの先に居るのはヤナップとヒヤップ。バオップは水が苦手な為にナマエの足元で大人しく非難している。



「ナーップ!」

「ヒヤヒヤッ!」



今日みたいに少し暖かいと、こうして水遊びがしたくなるポケモン達。勿論、ヤナップとヒヤップも気持ち良さそうに水遊びを楽しんでいる様子。



『バオップ、もう少しだけ水出してくれない?少しだよ、少し!』

「バオッ」


ナマエに指示され、ホースが繋がる蛇口へと向かうバオップ。ナマエから"少し"と言われたものの、何処までが少しなのか分かっていなかったバオップは蛇口を大きく捻った。











…―――ブシャァァアッ!!







『うわわッ!!?』





蛇口を大きく捻った為に水が出る勢いが増し、握っていたホースがナマエの手から離れ"クネクネ"と蛇のように暴れだした。





「ナマエー、そろそろ戻って――…ッ!!?」







や さ し い 時 間







『本当にゴメンなさい…ッ!』



ナマエが頭を下げ、懸命に謝る先にはベッドで横たわるデントの姿があった。

ホースが水の勢いで暴れ出した直後、ナマエ達を呼び戻しに現れたデントにホースから出る水が掛かってしまったのだ。

勿論、デントの身体は全身ずぶ濡れ。直ぐに部屋に戻って着替えさせたものの、数十分後にクシャミをし出し、熱を測ってみると37.6℃の微熱。風邪を引いたのには間違いないだろう。



「うん…、もう良いから…ね?」

『で、でも…』

「僕が出て行くタイミングが悪かったのが原因だし、ナマエは悪くないよ」

『デントー…』



デントより狭い肩を竦め"しゅん…"と落ち込むナマエ。そんなナマエにデントはそっと手を伸ばし優しく頭を撫でた。



『ゴメンね…』

「うん、もう謝らないで欲しいな」

『うぅ…』

「落ち込んだナマエより笑っているナマエの方が好きなんだけどな」

『デ、ント…』



デントの言葉に思わず顔を赤らめるナマエ。一気に頬が熱くなるのが分かる…。

ナマエは嬉しさと恥ずかしさに耐えられず、椅子から立ち上がり『お、お粥…作って来るね』と言い残し、デントの部屋から出ようとした。









…―――ギュッ







「行かないで」



『え…?』




振り返ると、デントが私の手首を掴んでいた。

少しだけ潤んだ瞳で私の事を見てる。風邪の所為なのか、普段とは違って余裕のないデントの表情。

風邪で苦しんでいるというのに、不覚にもドキドキしてしまった…。




「今だけは傍に居てくれないかな…」

『デント…』

「お願い、傍に居て…」



…――ずるいよ、デント。余裕のない顔して、優しい笑顔を向けてくるなんて…。

それに…デントから「お願い」なんて言われたら、断れるはずないよ…。



ナマエは再びベッドの傍に備えられた椅子に腰を下ろすとデントの汗ばむ手を両手で優しく包み込んだ。



「ナマエの手、冷たくて気持ちが良い」

『デントの手は暖かいね』

「熱の所為だよ」

『ううん、熱がなくてもデントの手はいつもポカポカしてて暖かいよ』



優しさが込められた暖かいナマエの笑顔にデントは安堵したのか一気に眠気に襲われた。





(このまま、ナマエに看病されるのも悪くないな…)






--END--

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