「ところでナマエさん」
『ふぁい?』
三つ子への挨拶も済み、先程デントが用意してくれたシフォンケーキを頬張るナマエにコーンが声を掛けた。
君 を 護 る た め に
「プラズマ団に追われていたとお聞きしましたが…」
プラズマ団の話を切り出されると、ナマエは口に残っていたシフォンケーキを"ゴクッ"と飲み込みコーンからの問い掛けに大きく頷いた。
『は、はい…』
「プラズマ団は何と言っていました?」
『えっと、ポケモンの解放だの何だの言ってたような…』
「やはり、ですか…」
ナマエの言葉を聞いたコーンは深刻そうな表情を浮かべている。
『あの、プラズマ団って一体何なんですか…?』
「言ってしまえば、おかしな宗教団体みたいな物ですよ」
『し、宗教団体…』
「ええ。以前、この街でプラズマ団が演説を行っていたのを見ました」
『演説!?』
「はい。その演説の中でもナマエさんが聞いた事と同じような事を話していましたよ」
「確か、その時は"ポケモンを人間の手から自由にせよ"なんて言ってたよね」
『デントさんも演説を聴かれたんですか?』
「勿論、あんなに派手な演説を開かれたら聴かない訳にもいかないよ」
コーンと同じようにデントも深刻そうな表情を浮かべている。ポッドだけは、ただ独りケーキに夢中で話の内容などチンプンカンプンの様子だった。
「全く…、ポッドは相変わらず呑気ですね」
「んぁ?だってよー、ンな難しい話されても俺にはイマイチ分かんねェよ」
「あはは、ポッドらしいね」
「兎に角、ナマエさんは気を付けて下さい。またナマエさんを狙って来るかもしれません」
『は、はい…』
「まぁ、プラズマ団って野郎達が来ても俺がナマエちゃんのこと護ってやるぜ」
『有難う、ポッド君…』
ポッドの言葉を聞いて安心したのか、ナマエの表情から不安の色が消えた。
しかし、二人の光景を間近で見ていたデントだけは眉間に皺を寄せながら気難しそうな表情でナマエを見つめている。
「デント、どうかしましたか?」
デントの様子に気付いたコーンは、どうかしたのかとデントの顔を覗き込んだ。
「あ、いや…何でもないよ」
コーンに顔を覗き込まれると"ハッ"とした様子で表情をいつものニコやかな笑顔に戻すデント。
(何だろう、このモヤモヤ感は…。ポッドとナマエさんを見ていると胸焼けがする様な感じがする…)
「きっと疲れているんですよ、デント。今日は早めに休んだ方が良いのでは?」
「大丈夫だよ、コーン。心配してくれて有難う」
『デントさん、具合悪いんですか…?』
デントとコーンの遣り取りが聴こえていたのか、ナマエは心配そうな表情でデントを見つめている。
「ううん、悪くないよ?」
『・・・ッ、』
きっと私の所為だ。今日一日、デントさんの事を振り回しちゃったから…。デントさんの厚意とは言え、迷惑を掛けたのは私だもの。
『ゴメンなさい、デントさん…』
「何でナマエさんが謝るんだい?」
『私なんかと出逢ったばっかりに…』
狭い肩を竦めながら"しゅん…"と落ち込むナマエにデントは手を伸ばし大きな掌でナマエの頭を優しく撫でた。
「ナマエさんに出逢ったこと、僕は後悔してないよ」
『でも、』
「ナマエさん、それ以上変なこと言ったら…僕怒るからね?」
『…――ッ!ゴ、ゴメンなさい…』
(今のデントさん、笑顔なのに凄く恐かった…)
「よーし!飯も食った事だし、ちゃっちゃと掃除終わらせちまおうぜ!」
「ご飯じゃなくてケーキなんだけど…?」
「どっちでも良い!ほら、行こうぜ?ナマエちゃん」
『あ、うん…』
部屋の掃除を再開しようと急ぐポッドに、ナマエはティーカップの底に残っている紅茶を全て飲み干し、慌てて椅子から立ち上がると急いでポッドの後を追い駆けた。
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