『一緒に暮らす事になるなら、長くても短くても最低限に知っておかなきゃいけない事があると思うんです…』



ナマエの言葉にデントとポッドは互いの顔を合わせた。ポッドの視線は"お前が話せよ、デント"と言っているようだった。











「そうだね、ナマエさんの言う通りだ。ちゃんと話すよ」

「つーか、何で話してねェんだよ?俺、てっきり話してると思ってたぜ」

『私が知っているのはデントさんがジムリーダーである事と三兄弟って事と…あと、レストランを経営してるって事くらいです…』



あとは、草タイプのポケモンが好きな事とか料理とか紅茶を淹れるのが上手って事くらいかな…?やっぱり、今のままじゃ知らない事が多過ぎる気がする…。



「げッ…肝心なこと言ってねェじゃん!デント!」

『肝心なこと…?』



ナマエは指を折りながら、ナマエ自身が知っている事をひとつずつ挙げるとポッドがデントの肩を揺すりながら少し大きめの声を出した。



「肝心かどうかは分からないけど…」

「いや、肝心だろ!肝心過ぎるだろ!」

『その肝心なことって何ですか?』



揺すってくるポッドの手を肩から払い除けたデントは"ふぅ…"と小さく息を吐き、ナマエへ向き直った。



「今此処に居るポッド、それから今は此処に居ないけど、さっき紹介したコーン。つまりは僕の兄弟…」

『それが…?』

「ポッドとコーン、彼等もまた僕と同じ、このサンヨウジムのジムリーダーなんだ」




え…?

ジムリーダーが三人…?

同じジムにジムリーダーが三人も居るの?え、ちょ…それ、一体どういうこと…?という事は、このジムはジムリーダーを三人倒さないとバッジが貰えないってこと…?そ、そんなの有り…?



デントの言葉にナマエの頭の中は軽くパニック状態だった。通常では考えられないサンヨウジムのシステムに理解出来ないでいた。そんなナマエの顔を覗き込むようにポッドがナマエの様子を伺う。



「おーい、ナマエちゃん?大丈夫か?」

『…あ、はい。大丈夫です…というより、ジムリーダーが三人ってどういう事なんですか?』

「簡単に説明するとチャレンジャーが僕達三人の中から一人を選びバトルする。そして見事勝利すればバッジをゲットってわけ」

『あ、成る程。私、てっきり三人とバトルして全員に勝利しないとバッジを貰えないのかと思ってました…』

「そりゃ、酷ェ話だな…」



なんだ、本当に吃驚した…。まぁ、でも三人の中から一人選ぶシステムなら納得出来る。



「ちなみに俺は炎タイプのポケモンを使うんだぜ!」



ポッドはそう言いながら腰ポケットからモンスターボールをひとつ取り出した。



「出て来い、バオップ!」



モンスターボールから現れたのは高温ポケモンのバオップだった。



「バオッ!」



バオップはモンスターボールから出て来るなり直ぐにポッドの肩へ飛び乗った。



『わ…!ポッド君はバオップを持ってるんだね』

「おう!バオップは俺の一番の相棒だ」

「バーオッ!」



ポッドに"一番の相棒"と言われ心底嬉しそうに喜びながらポッドの頬に頬擦りするバオップ。何とも微笑ましい光景だ。



『デントさんは草タイプでポッド君は炎タイプ…、じゃあコーンさんは?』



コーンが使うポケモンのタイプが気になったのか頭の中で属性を一通り思い出すナマエ。水、氷、電気、飛行、地面、エスパー…他にも沢山あり過ぎて頭がパンクしてしまいそうだ。

ナマエが頭を悩ませているとダイニングの入口からデントとポッド以外の声がした。



「コーンは水タイプのポケモンを使います。ヒヤップ、出て来なさい」



ナマエ、デント、ポッドの前に現れたのはコーンだった。コーンもポッドと同じようにモンスターボールから自身のポケモンを繰り出した。



「ヒヤッ!」

「ヒヤップ、ナマエさんに御挨拶をして下さい」

「ヒヤヒヤッ」



ヒヤップはコーンの指示通り、ナマエに近付きペコリと頭を下げ挨拶をした。



『コーンさんは水タイプのポケモンを使うんですね!ヒヤップ、初めまして。私はナマエ、よろしくね』

「ヒーヤヒヤッ」



頭を下げるヒヤップを優しく撫でるナマエ。少し恥ずかしいのか、ヒヤップの頬は少しだけピンク色に染まっていた。



『素敵なポケモンばかりですね』

「そう言って貰えて嬉し限りだよ」

『ヤナップもバオップもヒヤップも、とても幸せそうな雰囲気が出てて何だか微笑ましく思っちゃいました』

「幸せに決まってるよな、バオップ!」

「バオッ!」



レストランを経営しながらジムリーダーとして活躍してるなんて本当に凄い事だと思う。彼等のポケモン達も凄く幸せそうだし、本当に良い人達なんだろう。



『デントさん、ポッド君、コーンさん』

「ん?」

「どうしたー?」

「何でしょう?」

『ご迷惑をお掛けするとは思いますが、此れからよろしくお願いします…!』

「うん、よろしく」

「おう!よろしくなッ!」

「コーンの方こそ、よろしくお願いします」



これから先、彼等と暮せると思うと今更ではあるが楽しみに思えてきた。




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