デントの部屋から二つ先の部屋、廊下の一番奥に位置する部屋に案内されるナマエ。部屋の扉を開けると予想以上の散らかり振りだった。



『う、わ…』

「だから、言っただろー…」

『本当に物置状態ですね…』

「これ全部、必要ねェ物でも捨てるに捨てられなかった物なんだよな」

『な、成る程…』











それにしても酷過ぎる…。ダンボールの山だらけだし、物凄いホコリ…。これ、今日一日で片付けられるのかな…?



「まぁ、これ片付けちまわねェと部屋使えねェもんな…」

『で、ですね…。何か、ゴメンなさい…』

「今日中に終わらなかったら俺の部屋に寝ても良いからな!」

『え…!』



ポッドの言葉に一瞬だけ"ドキッ"と胸を高鳴らせるナマエ。

これがポッドの自然な優しさだと分かっていても何故かドキドキしてしまう。



「よーし、始めっか!」

『う、うん…』

「取り敢えず重たい物は俺が廊下に運ぶから、ナマエちゃんは軽そうな物を運んでくれるか?」

『分かりました』



暫く使われていなかった物置状態の部屋を手分けして片付けていくナマエとポッド。二人での作業だった為か、予想よりも短い時間である程度片付ける事が出来た。



「やっとスッキリしてきたな…。何つーか、ただの汚ェ部屋に辿り着いたっつーのか?」

『ぷっ、何ですか?その例え』



作業開始前には殆ど見えていなかった床が今ではきちんと床としての役割を果たしている。漸く此処まで片付いた、と部屋中を見渡すポッド。同時に"フーッ"と大きく溜息に似た物を吐いた。

暫くその状態で居ると"コンコン"と小さく部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。



「二人とも、少し休憩したら?美味しい紅茶とお菓子を用意して来たんだ」



"ギィ…"と木の軋む音を立てながら部屋の扉が開く。扉の向こうに居たのはデントだった。

デントの片手には円形のトレーが乗っており、更にその上には二人分のティーカップと紅茶を注ぐ為のティーポット、そしてシフォンケーキが乗せられていた。

紅茶の香りとシフォンケーキの甘い香りが室内に漂う。その香りの所為か、ナマエは急な空腹感に襲われた。



「流石、デント!気が利くじゃねェか!」

『凄く美味しそう…!』

「部屋の中、まだホコリっぽいけど此処で食べる?それともダイニングで食べるかい?」

『私は此処よりダイニングの方が…』

「あー…、まだ汚ェもんな。俺もダイニングが良い」

「じゃあ、ダイニングに運んでおくから落ち着いたら二人でおいで」



デントはナマエとポッドに向かってニコリと微笑むと部屋を後にした。残されたナマエとポッドも服に付いたホコリを払い、ダイニングへと向かった。

勿論、ナマエはダイニングの位置が何処なのか未だ知らない為、ポッドの後ろを着いて行くような形でダイニングへと向かう。



「此処がダイニングな?俺達三つ子の食卓の場だ!」

『お、覚えておきます…!』



ダイニングに設置されたテーブルには、先程デントが手にしていたティーカップとティーポット、シフォンケーキが並べられていた。



『デントさん、このケーキって手作りなんですか?』

「うん、そうだよ。多分、気付いてるだろうけど…僕達、レストランも経営してるんだ」

『やっぱり、レストランだったんですね…』



(…――ん?"レストランも"って事は…もしかして、ジムと両立してるっていう事で良いのかな…?)



ティーカップとケーキが置かれた席に着くナマエ。同時にデントの言葉に軽く頭を悩ませいた。よく考えたら、彼ら三つ子に関しては謎が多い…。

特に探りを入れようとも思わなかったが、やはり暫くの間だとしても…ひとつ屋根の下で共に暮らす事になっては最低限の事は知っておかなければならない。

ナマエはシフォンケーキを一口食べると、持っていたフォークを皿に置き、デントに尋ね掛けた。





『あの、デントさんって一体何者なんですか?それにポッド君とコーンさんも…』




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