「ねぇ、ナマエー…」
『何、クダリ』
「ボク、お腹空いたー」
『冷蔵庫にデザート入ってるでしょ、それ食べて』
ゴロゴロとソファーの上でクッションを抱えながら寝転がるクダリ。腹が空いたとナマエに強請るが軽くあしらわれてしまう。
「やーだー」
『もう、我儘言わないでよ。ノボリさんに言うわよ』
「むぅ。ところでナマエはさっきから何やってるの?ボク暇なんだけど」
『ああ、これ?ノボリさんに頼まれてた書類よ。明日迄に提出するようお願いされてるのよ。だから終わるまで待っててくれる?』
「ノボリ兄さんに?」
クダリは寝転んだまま、ぶすっと不貞腐れた表情を浮かべている。自分そっちのけで兄からの頼まれごとを優先するナマエが気に入らない様子。
「別に遅れたって良いんじゃない?ノボリ兄さんなら許してくれるよ」
『そういう訳にもいかないの。仕事の書類だし、遅れると迷惑掛かるでしょう?』
そう言って、書類にペンを走らせるナマエ。クダリは更に不貞腐れ、ナマエに向かって抱えていたクッションを軽く投げ付けた。投げられたクッションはナマエの背中にボフッと音を立てて命中した。
『…――痛ッ!な、何するのよ!』
「もう、ボク怒ったから」
『ち、ちょっとクダリ!?』
突然、ナマエの身体が宙に浮く。クダリがナマエを抱き抱えたのだ。ナマエはペシペシとクダリの腕を叩き、降ろすように促したがそれも敵わず。
『ねぇ、クダリ!お願いだから降ろして!』
「んー、降ろしてはあげるけど此処じゃダメ」
クダリはナマエを抱えたまま、先程まで自分が寝転んでいたソファーまで移動するとナマエを降ろし、ナマエの身体を跨ぐように覆い被さった。
『ク、クダリ…何乗っかって…』
「ナマエが悪いんだからね」
『え、ちょっと待って――…んッ』
突然塞がれる唇。クダリの舌がナマエの唇を強引に割って入ってくる。ナマエはギュッと目を瞑り、どうにか口付けから解放されようとクダリの肩を押し返すがクダリも男故に力で敵うはずもない。
『ん、は…ッ、クダ…リ…』
こんな大人っぽいキス、何処で覚えて来たのか。普段のクダリからは考えられない。甘くて痺れるような口付けにナマエは溺れそうになった。
「…ナマエ、可愛いー」
『はぁ…ッ、』
「ボクのキスに感じちゃった?」
『な、何なのよ…急にこんな事して…』
涙目になった瞳でクダリに視線を送るナマエ。クダリはニコニコと普段と変わらない笑顔でナマエを見下ろしている。
「さっきお腹空いたって言ったでしょ?」
『…それが?』
「だから、今から食べちゃおうかなって」
『…はい?』
「デザートなんかよりもさ、ナマエの方が何倍も甘くて美味しいし!それにボクの事そっちのけでノボリ兄さんの為に何かしてるナマエとか傍で見た居たくないしね」
『だ、だから!それは仕事で――ッ!』
ナマエが言葉を紡いでいる途中でクダリの掌が口元を塞ぐ。
『…むぐッ、』
「ねぇ、ちょっと黙って?もう聞きたくないからさ」
そう言い放つクダリの目は心無しか冷たく見えた。ナマエは口元を塞がれたまま、唯々、クダリを見つめる事しか出来なかった。
『ナマエ、イタダキマス』
口元を塞ぐ手をそのままに、クダリはナマエの首筋に顔を埋め甘噛みするように歯を立てた。同時にビクリとナマエの身体が反応を示す。
白い首筋にキスマークとは全く異なる歯型が付いてしまえば、クダリはそれを見るなり満足気な表情を浮かべる。
「跡付いちゃった、というか付けたんだけどね」
『ん、んぅ…』
クダリが纏うシャツの襟元をギュッと握り締めながら、未だに涙を浮かべているナマエ。クダリは涙が溜まる目尻をペロリと舐め上げた。反射的にナマエの瞼が閉じられる。
クダリが口元を塞ぐ手を離すと、ナマエは酸素を吸い込んだ。
『はぁッ、』
「まだ泣くには早いと思うんだけどなぁ」
『クダ――…ッひぁ!』
クダリは腹部から衣服の中に手を忍ばせると、そのまま下着の下にも手を滑り込ませ柔らかな膨らみを直に揉み上げた。
『あッ、や…ン、』
「ナマエの柔らかーい」
何とも言えない柔らかさに、むにむにと揉みしだきながら愉しむクダリ。その都度にナマエからは甘い声が漏れる。
クダリはそろそろ衣服が邪魔になってきたのか、ナマエの服を腹部から一気に捲り上げた。一緒に下着も捲り上げられてしまい、ナマエの胸は外気に晒される。
『…――きゃ!』
「隠すのはナシだよ?」
慌てて胸を隠そうとしたナマエの腕を払うクダリ。クダリは硬く主張した膨らみの先端に舌を這わせ、時折、桃色の輪郭をなぞっては刺激を与えた。
『ひゃ、ヤッ…ふぁ、』
クダリから与えられる刺激に堪らず腰を浮かせるナマエ。それに気付いたクダリはナマエの下半身に手を移動させてはショーツの中へ手を運ぶ。そこは刺激に耐えられなかった愛液で溢れていた。
「うわ、すっごい濡れてる!」
『や、やだ!言わないで…』
「こんなに濡れるまで感じちゃったんだ?ナマエってとっても厭らしい子だね」
『クダリ…ッ、』
それ以上は言わないで、と訴えるようにナマエは首を横に振った。勿論、クダリはそれを分かっていながらも聞き入れる事はせず、愛液が溢れる場所に指を這わせ膨れ上がった頂点に刺激を与えた。
『ひぁッ!や、ダメッ…ぁあッ!』
ビクビク、と身体を痙攣させるかの様に反応するナマエ。胸とは全く異なる快感にナマエは思わずソファーに爪を立ててしまった。
クダリの指の動きは止まる事なく、寧ろ激しくなっていく。何度も何度も頂点に刺激を与えられた後、今度はヒクヒクと微細に痙攣する膣内に指を挿し入れられた。充分に濡れたそこは男性の指を一本だけではなく、二本、三本と簡単に飲み込んでしまった。
『ぁあ、んッ!クダリ、やめッ…それ以上は――…ッ!』
突如、遅い掛かる快楽の波。ナマエは反射的に腰と背を仰け反らせた。
「もしかして、ナマエ…イッちゃった?」
ナマエの中から指を引き抜き、指先に纏わり付いた愛液をペロリと舐め取るクダリ。目の前ではナマエが荒く呼吸をしながらぐったりと脱力してしまっている。
『ん、ぁ…』
「ナマエって感じ易いんだね。でもまだ終わってないから」
そう言ってクダリは身に纏うシャツのボタンを外し、今度はベルトに手を掛ける。ベルトを外してしまえば、ズボンのホックを外しチャックを下げる。下着越しでも分かる主張が激しい自身。下着を下ろせば、ナマエの両脚を掴み反り立つ自身を宛てがった。
『ゃ、クダリ…待っ――…ひぁあッ!』
ズン、と一気に突き上げられ声を上げるナマエ。何とも言えない鈍い痛みに涙が肌を伝う。
クダリは一定のテンポを保ちながらナマエを突き上げた。突き上げる度に上下に揺れる膨らみに片手を伸ばせば硬いままの突起を指で捏ねる。
「ハッ、ナマエのナカ、すっごく熱い、ね…ッ」
『ぁ、ア…ッ!クダリッ、やぁッ!』
始めは鈍い痛みが続いていたが、今は痛みよりも快楽の方が勝っていた。何度も突き上げられた事によって二回目の絶頂を迎えるナマエ。膣内がビクビクと痙攣しているのがクダリ自身にも伝わった。
「あれ…ナマエ、またイッちゃったの?…ッ、でもまだボクがイッてないからね、」
『ふぁッ!や、やだやだ…ッ、もう無理、だかッ…らァア――…いやぁあッ!』
達したにも関わらず、再び襲ってくる快感にナマエは悲鳴にも似た声を上げる。涙で顔が濡れ、肌には髪の毛が張り付いている。きっと酷い顔になっているんだろう、ナマエは快楽に溺れる中でそう思った。
「ッ、く…ナマエ、イクよ…ッ!」
クダリはナマエの両脚をしっかり持ち上げ直すと律動を速めた。余裕のないクダリの表情を涙で歪む視界で捉えながら、クダリと共に三度目の絶頂を迎えた。
―――――…
―――…
――…
『…――ほんっと信じられない!クダリのバカ!エッチ!スケベ!』
あれから少し時間経ち体力も少し回復してきた頃、クダリはナマエに怒られていた。
「だって、元はと言えばナマエが…」
『お黙り!何で私の所為なのよ!クダリが勝手に嫉妬しただけでしょ』
『ナマエが嫉妬させるからいけないんだ』
クダリはソファーから降り、まだ横になっているナマエの直ぐ隣でナマエの髪を撫でている。
『…もうちょっと我慢出来る様になってよ、クダリ』
「うーん…」
『そしたら、私もクダリと一緒に気持ち良くなれるでしょ?さっきみたいだと、私…楽しくないし、ね?』
クダリは少し考えてから首を縦に振る。
「分かった、今度からは無理矢理したりしない!」
『うん、良い子。優しいクダリの方が私は好きだよ』
クダリの返事に微笑むナマエ。髪を撫でるクダリの手を取れば、ちゅ、と指先に口付けた。
「わ、ナマエ…くすぐったいよ」
『ふふ、でも嬉しいでしょ?』
「うん。ねぇ、ナマエ、ボク…本当にお腹ペコペコなんだけど」
ぐぅ、と腹の虫が鳴ると、クダリは自分の腹に手を置き横に摩る。
『じゃあ、もう少し休んでからクダリの食べたい物作ろうかな』
「やった!」
『もう、クダリってば子供みたい』
クスクス、とクダリに笑ってみせた後、もう少しだけ休むべくナマエは瞼を閉じた。
構 っ て 欲 し い か ら
(…――子供っぽいのに偶に見せる大人な彼が堪らなく愛おしい。きっと何をされたって私は彼を手放す事は出来ないんだろうな…)
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