「さぁ、入って」
ナマエが連れて来られたのは、とある一室。此処がデントの部屋なのだろうか…。
『あの、此処って…』
「僕の部屋だよ」
『入っても良いんですか?』
「うん、大丈夫だよ。ほら、早く中にどうぞ」
『お、お邪魔します…』
君 を 護 る た め に
まさか、初っ端からデントさんの部屋に招かれるとは…。男の人の部屋なんて入った事ないから何だか緊張する…。
デントの部屋に入ると、室内が広い割りにはきちんと整理整頓されていた。
『うわ、広い…』
「適当な所に座って良いよ」
『あ、はい…』
デントに促され、一番に目に入ったソファーへ腰を落ち着かせるナマエ。
デントはというと、部屋の奥で紅茶の準備をしていた。
「さぁ、召し上がれ」
『これって紅茶ですか?』
部屋の奥から戻って来たデントの両手には紅茶の入ったティーカップが握られていた。レモンハーブの良い香りが鼻を擽る。
「うん。僕が葉を厳選して淹れたんだ」
『凄いですね。えと、それじゃあ…頂きます』
ナマエはゆっくりとティーカップを口許へ運び、デントの淹れた紅茶を一口喉へ流し込んだ。レモンハーブの風味好い香りが口一杯に広がる。
『わ、美味しい…』
「それは良かった。きっと気持ちが落ち着くと思うよ」
『デントさんって凄いですね』
「そうでもないさ」
『私からしてみれば充分凄いですよ。こんなに美味しい紅茶、私には淹れられませんから』
「はは、どうも有難う」
デントはナマエの言葉に素直に喜びながら、腰ポケットよりモンスターボールをひとつ取り出し、その中からヤナップを繰り出した。
「ヤナップ、君も出ておいで」
「…――ナップ!」
『あ、ヤナップ…』
「ヤナヤナッ!」
『きゃッ…!』
モンスターボールから出てきたヤナップはナマエを見るなり、ナマエの胸元に向かって飛び込んだ。
「こ、こら!ヤナップ!」
「ヤナァ…」
『ヤ、ヤナップ…どうしたの?』
慌ててティーカップをテーブルへ置き、突然飛び込んできたヤナップを受け止めるナマエ。ヤナップはナマエにギューッとしがみ付いていた。
「ヤ、ヤナップ…もしかしてナマエさんが来て嬉しいのかい?」
「ナップ!」
デントの言葉に大きく首を縦に振るヤナップ。ヤナップの頬はなぜかピンク色に薄っすらと染まっている。
「ま、まさか…ヤナップ、君…」
「ヤーナァ…」
「ナマエさんに惚れてる…?」
『…ええッ!?』
次いで紡がれたデントの言葉には更に顔を濃いピンク色に染めるヤナップ。どうやら、ナマエに惚れたというのは事実のようだ。
「参ったなぁ…」
『ヤナップ…私の事、好いてくれてるって本当?』
「ナップ!ナップ!」
『…――ッ嬉しい!有難う、ヤナップ!』
「…え!?」
先程、ナマエが驚いたように今度はデントが同じように驚いた。
ナマエは自身を好いてくれているヤナップを潰さない程度に思い切り抱き締めた。ヤナップも嬉しそうにナマエの胸元へ頬擦りをしている。
「あはは…、良かったな、ヤナップ…」
(僕は何だか複雑な気持ちだけどね…)
…―――コンコン
暫くすると、デントの部屋の扉をノックする音が響いた。
デントはナマエとヤナップをその場に残し、部屋の扉を開けに移動した。
「お店は終わった?」
部屋の扉を開けると、そこには先程の青年二人が立っていた。
「今日は早めに切り上げましたよ」
「デントー、部屋ン中入っても良いかー?」
「良いよ、入って」
「廊下は寒いのでコーンも中に入らせて貰いますよ」
青年二人を部屋へ招き入れ、再びナマエとヤナップの元へ戻るデント。
…――勿論、デントの何処か雰囲気の似た青年二人を連れて…。
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