『単刀直入に言いますと…私、両親居ないんです』
「え、」
ナマエの言葉に言葉を失うデント。デントは黙ってナマエを見つめる事しか出来なかった。
君 を 護 る た め に
『あ、そんなに深刻そうな顔しないで下さい。両親居なくても今まで平気でしたから!それに私には大切なパートナーも居ますし…』
ナマエはデントに向けて笑顔を向けるが深刻そうな表情を浮かべるデントの表情は変わらない。
「大切なパートナーっていうのはジョーイさんに預けたポケモンの事かな?」
『はい、私が幼い頃からずっと一緒なんです…』
「家族同然って感じだね。ところで旅をしている理由は?」
『えーっと、自分探しになるのかな。あと何でも良いから新しい物に出会ってみたいっていうのもありますね。イッシュ地方に来たのは最近なんですよ』
ナマエは鞄の中からシンオウ地方の地図を取り出すとデントに向けて地図を開き、地図の中心から少し左側に表記されてある"ソノオタウン"と書かれている場所を指差した。
「ソノオタウンって言う所から来たのかい?」
『はい。花が沢山咲いていて、とても綺麗な町なんですよ』
「へぇ、一度行ってみたいなぁ」
『いつかお暇がある時に是非いらして下さい。小さな町ですけど癒されますよ』
ナマエさん、ソノオタウンの事を話し出してから凄く幸せそうな顔になったな…。
きっとソノオタウンで過ごした日々が幸せだったって事なんだろう。
「それじゃ、イッシュ地方にはジョーイさんに預けたポケモンと二人で来たんだね?」
『はい。旅なんて初めてだったから辿り着くまでに色々ありましたけど…』
「ジムを回ったりはしたのかな?」
『あ、いえ…ジムには挑戦してないです。私、バトル苦手ですし…』
「やっぱりシンオウ地方にも草ポケモンを専門に扱うジムリーダーって居るのかい!?」
突然、デントさんの瞳がキラキラと輝いた。何故か両手にはペンとメモ帳が握られている。いつの間に出したんだろう…?
『あの、デントさんって草タイプのポケモンを主に扱うんですか?ヤナップも草タイプですよね?』
「うん、草タイプだよ。ナマエさんの言った通り僕は草タイプの使い手なんだ。でも、他にヨーテリーっていう名前のポケモンも居るんだけどね」
『ヨーテリー?イッシュ地方のポケモンですか?』
「そうだね。後でジムに来た時に会わせてあげるよ」
ヨーテリー、どんなポケモンなんだろう、想像付かないなぁ。
『あ…ちなみにさっきの質問の答えですけど、シンオウ地方にも草タイプを扱うジムリーダーが居ますよ』
「へぇ、一度会って話しをしてみたいなぁ…」
デントさんって、よっぽど草タイプのポケモンが好きなんだろうな…。
草タイプのポケモンの話をし出してから、デントさんの表情はイキイキして見える。私の気のせいかな…?
暫くするとジョーイさんが預けたポケモン達の治療が終えた事を知らせてくれた。
「デントくーん、ナマエさーん。預けたポケモンは二匹とも元気になりましたよ」
『あ、有難う御座います!』
ナマエとデントは待合室のソファーから立ち上がると、ジョーイが待つ先程のカウンターへ移動した。
「タブンネ〜」
カウンターに戻ると同時にタブンネが治療室からデントとナマエのポケモンが入ったモンスターボールを運んできてくれた。
『このポケモンって…』
「タブンネだよ。ジョーイさんのお手伝いをしているんだ」
『へぇ、そうなんだ。有難う、タブンネ!』
「タブンネ〜」
タブンネに礼をし、預けていたポケモンを受け取ると通常サイズのモンスターボールを小さくし、鞄の中へ仕舞うナマエ。
同じようにデントもヤナップが入ったモンスターボールを受け取り、腰ポケットへ仕舞った。
「それじゃ、僕達は行きますね。ジョーイさん、有難う御座いました」
『有難う御座いました!』
「はーい、帰り道には気を付けて下さいね」
ナマエは笑顔で見送るジョーイに向かってペコリと頭を下げ、ポケモンセンターを出るデントを追うようにナマエもポケモンセンターを後にした。
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