プラズマ団に追われ、それをデントさんというウェイターらしき男性に助けられ…今現在、私はデントさんに背負われている。
…背負われて分かったけど、デントさんの背中って意外と広い。
『デントさん、本当に重くないですか…?』
「うん、平気だよ。寧ろ思ってたより軽かった」
『軽いはずないです、正直に言って良いんですよ…』
「正直に言ってるんだけどなぁ…」
君 を 護 る た め に
『デントさんって背中広いですよね』
「そうかな?」
『スラッと見える体系の割りには広いですよ』
見ず知らずの異性に背負って貰うなんて滅多にない事だが、目の前に広がるデントさんの背中は何故か居心地が良かった。
デントさんに背負われて10分程経過しただろうか、数百メートル先に街の入口であるゲートが見えてきた。
ゲートに到着するとデントさんは背中からゆっくりと私を降ろしてくれた。
『すみません、あの…有難う御座いました』
「どう致しまして。さぁ、行こうか」
『は、はい…』
ゲートを抜けると目的地であったデントさんの住む街に到着した。
デントさんが背負ってくれた御蔭で、まだ外は明るかった。日が沈む1時間程前と言ったところだろうか。
『結構都会な感じの街なんですね』
「そうでもないよ。この街は他の街に比べると小さい方だからね。新米トレーナーが多く街には来るけどね」
『ほうほう…』
街の看板には"サンヨウシティ"と書かれていた。この街はサンヨウシティという名の街らしい。
追記で"サンヨウとは三つ並ぶ星のこと"とも書かれていた。ちゃんと街の名前にも意味があるんだな…。
「ナマエさん、ポケモンセンターには寄らなくて大丈夫かな?」
『へ…?』
「ナマエさんのポケモン、疲れてるんじゃない?お腹も空いてるだろうし…」
『あ……』
そういえば、そうだった…。プラズマ団に追われ始めてから今までの間、一度もモンスターボールから出してないし…今朝から何も食べさせてあげてなかったんだ…。
『あの…ポケモンセンターに寄らせて貰っても良いですか?』
「勿論、構わないよ。早くポケモンを休ませてあげないとね」
『有難う御座います』
「それにポケモンセンターから僕達のジムは近いから」
『そうなんですね』
(…――ん?今、デントさん…"僕達"って言わなかった?私の聞き間違いかな…?)
私とデントさんはジムに行く前にポケモンを休ませるべく、先にポケモンセンターへ寄る事にした。
ポケモンセンターではジョーイさんが24時間問わず笑顔で出迎えてくれた。
「こんばんは、ジョーイさん」
「あら、デント君!こんばんは…そちらの方は?初めて見る顔だけど」
ジョーイは笑顔のままデントの隣に立つナマエに顔を合わせた。
「彼女とはヤグルマの森で出逢ったんです」
『あ、えと…ナマエと申します!』
「ヤグルマの森で?そうだったのね。初めまして、ナマエさん。私はこの街のジョーイです」
『シンオウ地方のジョーイさんとは顔が違うんですね?』
「ナマエさん、シンオウ地方から来たの?随分遠出なのね」
…――そう、ナマエはイッシュ地方出身ではない。遠く離れたシンオウ地方出身だった。
「シンオウ地方…、もしかして旅の途中?」
ナマエとジョーイの会話に驚いた表情を浮かべるデント。
『あ、はい…。まだ言ってなかったですね』
「驚いたなぁ…」
「わざわざシンオウ地方からイッシュ地方に…長旅ご苦労様です。それより、ナマエさんのポケモンは休ませてあげなくて大丈夫ですか?それからデント君のヤナップもね」
ジョーイの言葉にハッとした表情を浮かべたナマエは身に着けていた鞄からモンスターボールをひとつ取り出し、そのモンスターボールをジョーイに手渡した。
『そうだった…!あの、この子…お願い出来ますか?』
「大丈夫ですよ。それでは暫くお預かりしますね」
「じゃあ、僕もお願いしようかな」
デントはヤナップが入ったモンスターボールをポケットから取り出すと、同じようにジョーイに手渡した。
「デント君のヤナップも暫くお預かりしますね」
「はい、お願いします」
『お願いします!』
ヤナップが入ったモンスターボールとナマエのポケモンが入ったモンスターボールは、ジョーイの隣に居たタブンネが治療室へと運んで行った。
「その間、僕達も此処で休んで行こうか」
『ジムに戻らなくて平気なんですか…?』
「平気だよ、僕が居なくてもジムとしては成立するからね」
『・・・?』
(ジムリーダーが居ないジムが成立…?一体どういう事だろう…?)
「それより、シンオウ地方の話し聞かせてくれないかな?凄く興味があるんだ!」
『え、あ…はい。期待に応えられるような話しは出来ないかもしれないですけど…』
ナマエはデントより先にポケモンセンター内にある待合室のソファーに腰を落ち着かせるとデントに向けてシンオウ地方の事を語り始めた。
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