「やっぱり森の中に隠れていやがったんだな。小娘、お前のポケモンを早くこっちに渡せ」

『嫌って言ったでしょ!諦めが悪いわね!』

「それから隣に居るガキ!お前のポケモンも我々プラズマ団に渡して貰うぞ」

『なッ…!待ってよ、狙いは私でしょ!?この人は関係ないじゃない!』



コイツ等…、やっぱりデントさんのポケモンにまで手を出す気でいる…!


ナマエはデントを庇うように前へ出ると握り締めていたモンスターボールから自身のポケモンを繰り出そうとした。……が、その行動はデントによって妨げられてしまった。











『デ、デント…さん?』

「成る程、そいう事だったんだね」



デントはナマエを自身の後ろに退避させると、プラズマ団員の目の前へと立ちはだかった。



『ま、待って…デントさん!危険です!』

「平気だよ。ナマエさんは絶対にそこを動かないで」

『デ、デントさん…』

「ヤナップ、準備は良いかい?」

「ナップ!」



デントに声を掛けられたヤナップはプラズマ団相手にやる気満々の様子。デントとヤナップを前にしたプラズマ団員も腰からモンスターボールをひとつ取り外し、そのモンスターボールの中からミルホッグを繰り出してきた。



「俺達プラズマ団にバトルを挑んだ事を後悔させてやるぜ!」

「後悔するのは君の方だよ。…――先手必勝!ヤナップ、穴を掘って地中に潜るんだ!」

「ナップ!」



デントの指示を受け、素早く地面に穴を掘り、地中へと潜るヤナップ。一瞬にして地中へと消えてしまったヤナップを目の前にプラズマ団員は動揺した。



「くッ…!ミルホッグ、地面に注意を払え!」

「ミルッ!」



いつ、どのタイミングで地中から飛び出してくるか分からない。自分のバトルではないが思わず息を呑むナマエ。

プラズマ団員が繰り出したミルホッグは周辺をキョロキョロと見渡している。ミルホッグがデントとナマエが居る側を、プラズマ員団はミルホッグと反対を見渡していた…――その瞬間だった。



「ヤナップ、今だ!二人が立つ位置の間からミルホッグを穴に引き摺り込むんだ!」

「ナァァアップ!」



デントの指示通り、プラズマ団員とミルホッグの立つ位置の間から穴を掘って出てきたヤナップ。

ヤナップは地中から現れると素早くミルホッグの両足を掴み自身の掘った穴へと引き摺り込んだ。プラズマ団員はハッとした表情を浮かべながらミルホッグの立つ位置へと視線を戻した。

しかし、既にミルホッグはヤナップが掘った穴へと引き摺り込まれており、ミルホッグの姿は地上には居なかった。代わりに先程まで地中に潜っていたヤナップのみが地上に戻っていた。



「こ、このクソガキッ!ミルホッグ、何してやがる!早く地上に戻って来い!」

「ミ…、ミル…ッ」



プラズマ団員の指示に穴から這い上がるミルホッグ。ミルホッグが穴から顔を出した瞬間、再びデントが動く。



「ヤナップ、穴に向かってタネマシンガン!!」

「ナァァアッ…プゥゥゥウ!!!」

「な、何だと!?」

「ミ、ミミ…ミルッ!?」



穴から這い上がった瞬間にヤナップが放ったタネマシンガンを顔面から受けたミルホッグはタネマシンガンの威力で穴からは出られたものの代わりに背後の木へ打ち付けられてしまった。



「ミ、ミルホッグ!?」

「…ミ、ミルゥ……」



今の攻撃でミルホッグは戦闘不能となり地面へと倒れ込んでしまった。



『ぅ、嘘…勝っちゃった…』



絶対に負けると思ってた…。ウェイター如きにプラズマ団を倒せるはずないって…。



「ち、畜生!お前等覚えてろよ!」



プラズマ団員は木の根元で目を回し倒れ込むミルホッグをモンスターボールに戻すと、その場から逃げるように走り去って行った。



「お疲れ様、ヤナップ。今のバトル、良いキレ味だったよ」

「ナップ!」

「街に戻るまで休んでくれ」

「ヤナッ!」



デントはヤナップをモンスターボールへ戻し、ボールを腰ポケットへと入れ、ナマエの居る背後へと振り返った。



「さて、と…用って今の奴等と関係ある事かい?」

『え、あ…その、はい…』

「どうして何も言ってくれなかったのかな?」

『見ず知らずの他人を巻き込む訳には…』

「うーん、じゃあ僕がジムリーダーをしてるって言ってもかい?」

『そ、それは…――え?ジ、ジムリーダー?』



デントの言葉に一瞬何の事か理解出来ず、デントを見据えるナマエ。



『デントさんって、ジムリーダーなんですか…?』

「言ってなかったかな。僕はサンヨウジムのジムリーダーをしているんだ」

『え、えぇ…』

「そんなに驚く事かな?」

『い、いえ…』



通りで強い訳だ。プラズマ団をあっさりと倒してしまうんだもの…。彼が本当にジムリーダーなら勝って当然だ。



『あ、あの…有難う御座います…』

「どう致しまして。さぁ、森を出よう」

『え…?』

「ん?どうかした?」

『デントさんのこと巻き込んじゃったのに、まだ私と居る気なんですか…?』



恐る恐ると言葉を紡ぐナマエにデントはニコリと微笑み、ナマエの手を取り軽く握り締めた。



「ナマエさん、行く当てはあるのかな?」

『いえ、まだ特には…』

「森の外までって約束だったけど、またプラズマ団を名乗る人達に襲われる可能性も否定は出来ないから…もし良かったらジムに来ない?」



デントから思わぬ誘いを受けたナマエはどう言葉を返して良いのか分からず、その場に立ち尽くしているだけだった。





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