先程とは全く異なる口付け。強引なんてものはなく、優しくて甘くて、溶けそうになるくらい心地良い。身体の奥底が疼いてしまうくらいに。



『ん、んぅ…』



ケフカの舌先が口内で絡められられるとそれに応えるように自らの舌を動かす。どちらの物とも言えない唾液が口の端から溢れ伝う。ナマエは赤と黄のカラフルな襟元をギュッと握り締め、ゾクゾクとする感覚を耐えた。






師 と 私 と 






ゆっくり唇が離されると二人の唇を繋ぐ銀糸。更に離れるとそれは薄く伸びて切れてしまった。



『はぁ…ッ』

「そんな顔して、もしかして感じちゃった?」



ほんのりピンク色に染め上がったナマエの頬をケフカが優しく撫でる。



『そんな…事は…』

「どうですかねぇ?案外、身体は正直なものですよ」

『…え、ひゃッ!』



再びケフカに押し倒されると、視界に天井が広がった。すぐにその天井は覆い被さるケフカによって見えなくなってしまう。



「ナマエ、」

『は、はい…』



これからどうされるかなんて、考えなくても分かる。男と女が二人きりで寝台の上に、…――分かり易い条件でしかない。



「ナマエはワタシの事をどう思っていますか?」

『え…』

「ワタシはナマエが愛しい。本当だったら誰にも見せる事なく閉じ込めておきたいくらいですが…それは出来ないので、ね」



今の言葉はきっと本心だろう。でも、嫌とは思わなかった。ずっと傍に居られるなら閉じ込められても良いと、そう思ってしまった。



『…ケフカ様、』

「はい」

『私はケフカ様と出会ってから凄く幸せでした、今も幸せです。私の持っていた魔力に気付いて、独り残された身寄りのない私に魔法を教えてくれて…とても感謝しています』



ナマエは今まで言う事の無かった言葉をケフカに伝え始めた。



「でも、ナマエの家族を壊したのはぼくちんだって知っているでしょう」

『はい…それもケフカ様から教えて頂きましたから。確かにケフカ様に家族を殺されてしまったのは事実ですが、その穴を埋める以上の事をして頂いたので…。偶に思い出したりはしますけど、だからと言って悲しいとか辛いとかそういうのは無いですから』

「それでも幸せを感じていたんですか?」

『幸せですよ、嘘じゃないです』



頬に置かれたケフカの手の上に自らの手を重ねるナマエ。



『失礼かもしれませんが、私にとってケフカ様は家族みたいなものです。でも…』

「でも?」

『…でも、それだけじゃ満足出来なくて…。気付いたら、ケフカ様は師匠なのに胸がザワザワして…これ以上は求めちゃ駄目って分かっていても抑えられなくて、』

「ナマエ…」

『だから、ケフカ様との距離が離れてしまわないように…必死だったんです…自分でこんなこと言うのも変なんですけど、』



ナマエは溜め込んでいた思いをケフカに伝えると、数回深呼吸をした。



『ケフカ様、』

「何ですか?」

『…私は、ケフカ様の事をずっとお慕いします。殺されても構いません、受け入れます。ただ、ひとつだけ望んでも良いでしょうか…?』

「言ってみなさい」

『ケフカ様を一人の男性として愛しても良いですか…?』




ケフカはナマエの言葉に応えるようにニコリと微笑んでみせた。変な事を考えている時の笑顔や怪しい笑顔ではなく、純粋に喜びからくる笑顔。ケフカは言葉の代わりにもう一度口付けを落とす、触れるだけの口付けを。




「ナマエ、ワタシを生涯愛せますか?」




ケフカの問い掛けに躊躇う事なく首を縦に振るナマエ。




『…愛します、生きてる間も死んでからも』




ケフカを見つめる、ぶれる事のない真っ直ぐな瞳。ケフカはナマエの返事に満足そうな表情を浮かべれば、そのままナマエの首元に顔を埋めた。





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