『ケ、ケフカ…様?』



突き刺さる冷たい視線。逸らしたいのに何故か逸らせなかった。






師 と 私 と 






『い、た…ッ』



シーツに縫い付けるケフカの手に力が入る。



「これくらい何て事ないでしょう」



両脚の間に割り込んでくるケフカの膝。逃げられない。



『ケフカ様…一体どうし――…ふっ、んぅ!』



突然の口付けによって言葉を遮られてしまう。ねっとりと絡んでくる生暖かい舌先が口内でナマエを犯す。堪らず、抵抗しようと腕に力を入れるが所詮は男と女の差。力では敵うはずもない。



『ふぁ…ンン…ッん』



それは何度も何度も角度を変えた。息継ぎが出来ないくらいに。



「…ッは、ナマエ」

『はぁ、はぁ…ッ』



深い口付けから漸く解放される。酸素が足りない所為か少しだけクラクラしているナマエ。不足した酸素を取り込もうと呼吸を急ぐ。



「ナマエは誰のモノか分かってる?」



ケフカの問い掛けに、どう答えて良いのか分からなかった。分かってはいるのに、何故か答える事が出来なかった。



『わ、たしは…』

「私は?」

『…ケ、フカ様の…』




"ケフカ様のモノです"




きっと直ぐにそう答えてしまえばケフカは満足するのであろう。しかし、それを言ってしまえば、ケフカは満たされてもナマエ自身が何故か満たされなかった。




『・・・ッ、』

「…あーあ、つまんないねぇ」




ケフカは抑えていたナマエの両手から手を離すと覆い被さっていた身体を起こした。




『…え、』

「さっさと、ぼくちんのモノですって言っちゃえば良いのに」

『・・・ッ』

「何を躊躇ってるんですか?不満?」

『そういう、訳じゃ…』

「じゃあ、どういう訳?」



未だ仰向けになったままのナマエ。その横で綺麗にカラーリングされた長い爪を弄りながらケフカは問う。



『…私はケフカ様の、だけど…その…』



どう言葉にして良いのか言葉に詰まる。一体、ケフカに何を望んでいるのか。これ以上の何を求めているのか。手を取ったあの日から身も心も全部捧げたはずなのに。

愛しいと、そして本当かどうかは分からないけれど伴侶にしてくれると言ってくれた、ケフカの言葉を思い出す。…嬉しかったし、私もその言葉に応えたいと思った。こんな私がそれを望んでも良いのだろうか。



『ケフカ様、の…』



ナマエは押し倒されたままだった身体をゆっくりと起こすと、ケフカに向き直り目の前で正座した。



『…特別、に…』

「特別?」



ふと、脳裏に浮かび上がってきた言葉。



『ケフカ様の特別に…』

「…ふうん、特別ねぇ」



カリカリと爪と爪を弾きながら、ケフカはナマエの方へ視線を向けた。



「ナマエは元からぼくちんの特別ですよ?何を今更言うのか、と思っちゃいましたが自覚が無かったのなら言っておきましょう。ナマエは特別です。こうして目の前にワタシが居るのも、ナマエが居られるのも特別故だからね」



ケフカの言葉にナマエはギュッと唇を噛み締めた。



「特別だから嫉妬もする、ぼくちんのハートは意外とピュアなんですよ」

『ケフカ様…』

「だから、ナマエがさっきみたいにレオの事なんか話すとぼくちん何しでかすか分かんないの」



ぷす、とケフカの長く鋭い爪がナマエの額に軽く当てられた。チクリとした感覚に一瞬目を瞑るナマエ。



『イ…ッ、』

「この間も言ったけどさぁ、ナマエはぼくちんの伴侶になるんですよ。特別じゃなかったら伴侶になんかする訳ないでしょう」



やれやれ、と手の平を返し首を横に振るケフカ。



『…あれは、本当だったんですか…?』

「冗談であんな事は言いませんよ」

『・・・、』



改めて確認し、その答えを聞いたナマエは涙が溢れそうになった。口元を手で覆えば込み上げてくるそれを耐える。



「嬉しいですか?」

『は、い…ッ』

「そうですか。では仕切り直しましょう」

『…え?』

「さっきの、ナマエにとっては初めてのキスでしょう?」

『ぁ…』



ケフカはニヤリと妖笑みを浮かべると、ナマエの頬を両手で包み込んだ。紫色に染められた唇が徐々に近付いてくる。



『・・・ッ、』



ナマエは触れる寸前に目を閉じケフカを受け入れた。





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