※闇人



 この殻に入ってからというもの、永井、永井ぃと呟いてばっかだ。でも永井って名前の殻の闇人なんて何処にもいなかったからなぁ、もしかしたらうろちょろしてる人間の中にいるのかもなぁ。きっと会えばすぐに分かるんだろうな、永井ってやつ。この殻もちょっとガタきてるから、新しく乗り換えるならそいつにしようかなぁ。ああでも、結構気に入ってるんだよなぁ、この殻。

「ふふ、」

 他の迷彩着てる闇人の奴らにもなーんか、慕われてるみたいだし。沖田さん、沖田さんってついてくる子もいるんだよね。

「沖田さん」

 ほら来た。俺よりも誰よりも、ちっちゃくて動きも遅くって、ピンクの布をぐるぐると巻きつけてる珍しい零式の闇人の女の子。俺のあとをくっ付いてこようとするけど俺とこの子とじゃあコンパスの差が大きくて、気づくと居なくなってるんだよね。ちょっと立ち止まってれば直ぐに追いついて来るんだけどね。

「早いですってば沖田さん」

「なまえが遅いんだろー」

「女の子には優しくした方がいいですよ」

「ごめんごめん」

 からからと笑いながら、ぽんぽんとなまえの頭に手を乗せる動作はとても自然で、ああこの殻はいつもこうしてたんだなぁとしみじみ思った。あまり表情を変えないなまえが嬉しそうにはにかむもんだから、俺もつられて笑顔になった。気のせいかもしれないけど、闇人特有の白い顔がちょっと赤くなってるように見えた。かわいいなぁ。

「今度は歩幅、合わせてくださいね」

「うーんどうしようかな」

「乙式で追い掛け回しますよ」

「それは勘弁」

 乙式はやたら早いからなぁ、追い掛け回されたらしんどそうだ。
 乙式になられたら困るから、右の手だけで武器を抱えて左の手を差し出すと、俺を見上げて首を傾げるなまえ。ぽかんとした顔もかわいいなあなんて思いながら、何も持ってないなまえの右手を掴んだ。

「手ぇ繋いでればはぐれないし、近いでしょ?」

「沖田さ、っ」

 当てもなくなまえの手を引き暗闇を突き進めば、とっさにバランスがうまく取れなかったなまえから声があがった。こけても引きずるからなー、と声をかけたら、俺の腕にぎゅうとしがみついて早足でついてくるもんだから、もうかわいくって。


「何処にいくんですか?」

「何処がいい?」

「……沖田さんと一緒なら、どこでも」

「ふふふっ、嬉しいこと言ってくれるね」


 俺しあわせで爆発しちゃうかも、なーんて。




闇人のくせにリア充してた沖田さんは爆発します。