桜餅、ひなあられ、甘酒等を近くのスーパーで購入し、そのまま修さんの住むマンションに足を運んだ。事前に連絡をしておいたので、修さんは快く迎えてくれた。にこりと微笑む彼の足元では、ツカサが私を見上げていた。

「ツカサ、お誕生日おめでと」

 靴も脱がずに玄関先でしゃがみ込み、ツカサと同じ目線になって両手で彼女の顔をぐりぐりと撫でつける。顔を寄せお祝いの言葉をかければ、べろりと頬を舐められた。くすぐったくて笑っていると、ツカサ共々修さんに頭を撫でられてしまった。

「なまえ、ちゃんと中に入ってからにしてくれないかな」

「はぁい」

 名残惜しくツカサの頭を一撫ですると、くぅんと小さく鳴いたツカサ。構いたいのはやまやまだけど、修さんの言うとおりに、部屋にお邪魔してからにしようと靴を脱いだ。
 買ってきたものを修さんに渡し、一緒にリビングに入る。えらく高そうなソファに腰を下ろし、隣にやって来たツカサにぎゅうと抱き付いた。首辺りに顔を埋めると、獣の匂いと修さんの匂いがした。私がもふもふするのにも大人しいツカサに、調子に乗ってあちこち撫で回していると、修さんがお茶を淹れてきてくれた。

「ありがとう、修さん」

「こちらこそ、色々ありがとう。これはツカサに?」

「うん。犬用のケーキなんてあるんだなあって思ったから買っちゃった」

 ツカサのために予約してまで買ってしまったのだ。綺麗にラッピングされた箱から出されたバースデーケーキを修さんがツカサの前に置くと、匂いを嗅いだ後にぺろりと食べてくれた。何となく嬉しくなって、ツカサにもう一度おめでとうと言いながら撫で繰り回して抱きしめていると、私達を同時に、修さんが抱きしめてきた。不思議に思って彼を見上げると、目を細めてふわりと笑いかけられた。

「私もお祝いしてもいいだろう?」

「まあ、そうですけど」

 何も私まで抱きしめずとも、と思ったのだが、ツカサが嬉しそうに鳴いているのでまあいいか。耳の裏や顎の下を撫でると、気持ちよさそうに目を瞑るツカサが可愛くて仕方ない。修さんいいなあ、いつもツカサと一緒に居られて。
 私の考えが伝わったのか、修さんはくつくつと喉を鳴らして笑って口を開いた。

「じゃあ、なまえも一緒に私たちと此処で暮らすといいよ」

「……!」

 あからさまに笑顔になったのがいけなかったのか、私の反応は、修さんを更に笑わせる事になってしまった。


だって嬉しい提案だったから