ぶっちゃけた話、沖田さんは非常にもてる。
 女性人気も然ることながら、男性陣にすらもてもてだ。いや、そう言うと誤解を招きそうなんだけれど、以前彼の上司(というか相棒?勿論男だ)がそう言っていたのだから仕方ない。恐らく人望がある的な意味だろう。そう思いたい。

 沖田さんが誰にでも好かれるのはよく分かる。私だって……その、好きですし。
 というか沖田さん、私という恋人がありながら、誰にでも愛想を振りまくのは止めてくださいと言いたい。言ってやりたいけど、沖田さんにうざったい奴だと思われそうで怖い。沖田さんは優しいから、顔には出さないだろうけど、きっと心の中では迷惑に感じているのでは――――

「こら」

「ふ、ぉ」

 悶々と考え込んでいたら、ぐにりとほっぺを摘ままれてしまった。慌てて思考の海から帰ってくると、摘まんだ手の持ち主は沖田さんだった。ほっぺに触れる指に、思わずそこが熱くなってしまう。いつの間にここに来たのだろう、にこにこと笑う沖田さんは楽しそうに私のほっぺをぐにぐにと弄んでいる。

「ふぁの、おきたふぁん」

「なまえのほっぺやらかいなぁ」

「はなひてくらさい」

 何言ってるのかわかんねー、と意地の悪い返事をいただいてしまい、中々手を離してもらえない。くそう沖田さんめ、そんなに楽しそうにしてたら怒りづらいじゃないか。
 抵抗らしい抵抗もせず、沖田さんの好きにさせることにした。誰だよ沖田さんが優しいとか言ったの。私だ。

 満足したらしい沖田さんに解放されたのは、そのすぐ後だった。
 休憩ですか、と訊ねたら、なまえが見えたからつい、と答えた沖田さん。その言葉に嬉しく思いながら、三沢三佐に少しだけ申し訳なくなった。休憩じゃないんですね、わかりました。

「だってー、なまえがなんか難しい顔してたからさぁ」

「……してませんよ」

「してたってー。ほら、おにいさんに話してごらん?」

 そう言って私の顔を覗きこんでくる沖田さんに、先程まで考えていたことを思い出してふいと目を逸らした。だって本人じゃないですか。言えるわけないじゃないですか。
 
「あ、分かった。あれだろ、俺にかまって欲しかったんだろ」

 当たりだろー!とやけに明るい声で訊いてくるくる沖田さん。合ってるような合ってない様な、何とも言えないラインです。が、肯定したらしたで恥ずかしいので黙ってそっぽを向く。や、確かにかまって欲しいですけど!

「言ってくれればいくらでもかまい倒してやるのに」

「あの、沖田さん」

「んー?」

「……言わなくても、かまい倒してください」

 言った後に、ちらりと沖田さんに視線を向けたら、ちょっと驚いた目と目が合った。
 やっぱり言わなきゃよかったなぁと後悔していたら、ぐしゃぐしゃと頭を乱暴に撫でる感触が。

「なまえくっそかわいいなぁもう、何だぁそんなに寂しかったのかそーかそーかぁ!」

「いたっ、やめ、おきたさ、」

「今日はもう離してやらないからなぁ」

 前言撤回、言ってよかった、かも。




ちょっと素直に
なったらいいこと、あるかもね。