「…でも」 「うん?」 「恋人になって何をするのかも僕わかんないんだけど」 「…うん。…私もわかんないよ?」 「そっか、どうしよう。」 「うーん…」 「…とりあえず、下校時間だし、一緒に帰る?」 「ああ、そうだね。」 …なんともぎこちない とにかくお互い教室にカバンを取りに行く。 一人でカバンに教科書などを詰めながら改めて考えるけど、…私何やってるんだろう? 今まで全然話したこともなかった男の子と、今日初めて話したような人と付き合うなんて、いつから私はそんな軽い女になったの? しかも、友達をふった直後に。 … ……………私凄く性格悪い女みたいじゃん! イケメンだから付き合ったみたいなさ!いや渚く…カヲルはイケメンだけど!かなり! 「なまえ?」 「は、はいっ!」 「?何してんの?帰ろう」 「あ…う、うん。」 一人でもんもんとカバンを握りしめているとカヲルが教室まで呼びに来た。 どうしよう、言った方がいいんじゃ… 好きでもない人と恋人になったりしちゃいけないんだって… …そりゃあ、私たち二人はその好きがどんな感じなのかさっぱりわからないから、二人で研究しようって話しだったんだけど、でも、やっぱ、よくないんじゃないのか?!よくわかんないけど! 「あ、あの…!」 「あ、シンジ君」 意を決してやっぱりやめようと持ちかけようとした時、カヲルは廊下を通りがかった男子を呼びとめていた。 …あ、確か、この人、エヴァのパイロットの人だ。 ……って、そういえば渚く…カヲルもなんだけど。 「シンジ君も今帰るの?」 「なんだ、渚か。」 「なんだって酷いな〜。」 「帰るからついてくるなよ。」 「なんで、僕も帰るんだよ。」 「知らないよ、方向違うだろ。」 「そうだけど。でもまあ、付いていかないから安心しなよ。今日から僕この子と一緒に帰るから。」 突然私に話題がふられて焦る。碇くんはちらっと私を見るとすぐ反らして帰ろうとしていた。 「あっそう……渚、女子に変なことするなよ。」 「変なことってなに?」 「…別にその人が嫌がってないならいいし、僕には関係ないけどさ。」 「?なんで嫌がるのさ。なまえは僕の恋人だから、一緒に帰るのも普通じゃない?」 「えっ」 「シンジ君なんでそんな驚くの。」 「だってお前…いっつも告白とかされてもわかんないとか言って断ってただろ。」 「うん。でもまあ、なまえは、…いろいろ事情があって?ね?」 「えっと、あの…」 「…渚には、嫌なら嫌ってはっきり言った方がいいよ。こいつ、わかんないから。」 「?なまえ嫌なの?さっきは違ったじゃん。」 「えっと…い、嫌じゃないよ。」 へらっと笑ってそう答えてしまう。 あ〜〜〜〜〜…私の悪いくせだね〜〜〜〜… でももう今更やめたいとか、私には言いだせないや。 「ほらね!」 「あっそう…」 「改めて、これが僕の友達のシンジ君」 「友達じゃない。」 「これが恋人のなまえ!」 カヲルによって私が紹介されてしまうと、碇くんはため息をついてから、カヲルと話すときとはうって変わって穏やかな感じで話しかけてくれた。 「……碇シンジです。…はじめましてだよね。」 「あっ、えっと、うん。なまえです。」 「なんか、よくわかんないけど…渚のこと頼むよ、変な奴だけど。」 「酷いなーシンジくんは。」 なんだかんだ言いつつ彼らは仲よさそうだった。シンジ君はじゃあ先に帰るよと言ってさっさと教室を出て行ってしまった。 ていうか私、もう完全に後戻りできない… 「じゃあ、僕たちも帰ろうか。」 「…うん。」 「でもさあ、よくわかんないよね。恋人じゃなくても男女二人で帰る人もいるのに。」 「…そうだね。」 「…あ、あの人達、手つないでる。…恋人どうしかな?」 「…多分。恋人とは、手つないで歩くって言うね…。」 「じゃあ繋ぐ?」 「えっ!な、なんで」 「だって僕たちも、一応恋人同士でしょ。」 「…そ、っか?」 「うん。はい。」 そう言ってカヲルが差し伸べた手に、おそるおそる手を重ねるとぎゅっとつかまれ歩きだした。 「……私カヲルのこと好きになれるかな。…好きってどういうことか、わかるのかな…。」 「うーん…僕、わかんないけど、頑張るからさ。」 「………」 「なまえが好きの意味わかるように。」 「……うん、私も、がんばるね。」 「ありがとう。」 こんな関係も、アリってことにしていいかな。 ×
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