「きく、菊っ」 「なんですかなまえ。」 「見て!上!」 散歩の途中、 なまえに言われ、菊は上を見ると、木の葉が真っ赤に染まっているのが見えた。 「あぁ…もうそんな時期ですか。」 「凄い紅葉だね。」 「綺麗ですね。」 「こないだ、桜の花が綺麗とか言ってたような気がするんだけどね。」 ふふっと笑う菊につられてあたしも笑う。 「わっ」 真っ赤な紅葉があたしの頭に降ってきた。 「もう散っちゃうのかな…」 「季節が移り行くのははやいですからね。」 菊と一緒にいると、そうは思えない。 ゆっくり時間が流れてるような気がするから… 今だって、こんなにもゆっくりで静かな時が流れているのに、菊ははやいと感じているの? それは、やっぱりあなたと私じゃ、今までの時間が全然違うから? 「…はやく、時間が流れても、どんなに時間が流れても、あたしは菊が……」 好き、と言おうとしたのに、いつの間にか近くに来ていた菊に唇を塞がれてしまった。 「好きですよ、なまえ」 菊に、先に言われてしまった。 じゃなくて…! 「き、菊…!何するの!そそそ、外だよ!!」 「散ってる紅葉で、誰も見えません。」 くすくす笑って先に行こうとする菊を追いかける。 あたしの顔は真っ赤になってると思うけど、もっと真っ赤な紅葉が隠してくれる。 ×
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