いつものようにお風呂から出てきて髪をふいたり体をふいたり

「は〜…」

なんとなく無心。

すると突然脱衣所のドアががらっと開いた。


…は?開いた?

驚いて目をやると目を丸くしたカヲルが立ってた。

「………」
「………」


…ええええっ!
状況を理解した私は慌ててまた風呂場に戻った。
み、見られた…私の貧相な体を…
何も言えないでいると磨りガラスのような風呂場のドアの向こうから、申し訳なさそうなカヲルの声が聞こえてきた。

「…、なまえ」
「…………」
「ごめんよ、わざとじゃないんだ。」
「…うっ…うん…私も、ごめん。」
「なまえは悪くないよ。」
「か、鍵閉めなかったの私だし…」
「いや、僕が気づくべきだったよ。」

ごめんともう一度言ってカヲルは出ていった。

「……………」

心臓止まるかと思った………。





恥ずかしくて着替えてからもしばらく出ていけずにいた。
やっと自分を落ち着かせてから出ていくとカヲルがアイス持って待ってた。

「アイスだ。」
「お詫びと言ったらなんだけど、」
「ううんあの…気にしないで、忘れてくれると嬉しいです…。ありがとう。」

アイスを受け取って食べる。
我ながら現金だとは思うけど、ずっと気にして過ごすよりずっと良いよね。

「美味しい」
「それは良かった。」
「今買ってきたの?」
「うん、一番近くのコンビニまで。どうせなまえは恥ずかしがって出てくるのに時間がかかると思ってね。」
「…………」
「ごめんって。なまえそのアイス好きだろう?」
「…好きだけど。」

カヲルはくすくす笑っている。
アイスで操作されてる…。
もう、忘れて欲しいのに…。
でも鍵を閉め忘れた私も悪いし、カヲルはわざとじゃないし、何も言えないなあ。

「いじめてしまったかな。じゃあ、髪の毛も僕が乾かしてあげるよ。」
「え、いいよ。」
「遠慮しないで。」

そう言ってドライヤーを取ってくるとコンセントに繋げた。

前から思ってたけど、なんとなくカヲルって有無を言わさない感じがある。
今も私はされるがままに温風を感じることとなった。

「熱くないかい?」
「………うん……」

ゴオーッとドライヤーが鳴る音と、カヲルの手が、指先が私の耳をくすぐった。
…………なんだこれ。
ただ髪にカヲルが触れてるだけなのに、異様に緊張する。たまに首とかに指先が触れると目にわかるくらいびくついてしまう。

「…も、いいよ、私自分でやるから。」
「ふふ、途中でやめさせなくてもいいじゃないか。最後までさせておくれ。」

ちらっと見たカヲルの顔はいつも以上ににこやかだった。

「………なんか楽しんでません?」
「おや、ばれたかい?」
「…怒るよ」
「ふふ、なまえは可愛いね。」
「……あのねえ、」
「ほら、乾いたよ。」

カチッと音がして風の音が消えた。

「これで許してくれるかい?」


…………多分私は、カヲルにはずっと敵わないんだろう。









次の日学校に行ったら皆に「なんか今日髪サラサラだね〜」ってほめられたのは余談すぎる!













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