「なー渚あ…」
「なんだい鈴原君、相田君」
「お前らってさあ…ほんまに付き合ってるんか?」
「…お前らって?」
「なまえとお前だよ。」
「付き合うって…恋人かどうかってこと?」
「そうだよ。めんどくさいなお前ってやつは。」
「恋人同士のはずだけど。ほんとに…って疑ってるの?」
「だってよお、ぜーんぜんそんな雰囲気しないんだもんなあ。」
「そうじゃそうじゃ!付き合う前となーんも変わらんとちゃうんか?見てる限りではそう変わらんように見えるわ。」
「変わったことあるよ。一緒に登校したり帰ったりは毎日するようになったけど。」
「そんなん付き合う前もほとんどそうだったじゃないか。おいドヤ顔やめろ!」
「他にないんか他に!もっとどこまでいったとか自慢でけへんのか!」
「どこまで行くって何?遊園地デートとか?」
「ちげええええええ!何こいつ純粋?!」
「…ああ、もしかして性的な話?君たち好きだよねその話。」
「全然純粋じゃなかった!」
「そういえば特に何もしてないけど。」
「やっぱりかああ」
「手は?手くらい繋いだだろ?な?」
「ああ、それならこないだ…」






「なまえ、帰らないの?」
「あっごめん待って、プリント提出してた〜もう帰る!」
「そう、じゃあ行こうか。」
「うん」
「今日はどっか寄ってくの?」
「う〜ん用はないけどお腹すいたな〜。クレープとか食べ行きたい。」
「いいよ。行こう…あ。」
「どうしたのカヲル。」
「前の二人さ…」
「え?…うちの学校の制服だね。」
「なんで手え繋いでんの?」
「えっ。う〜ん。恋人同士なんじゃない?」
「恋人同士…って僕らもだよね?繋ぐものなの?」
「えっ。えっと…う〜んする人達もいるししない人達もいると思うけど…」
「ふ〜ん。あ、クレープ屋だよ」
「あっほんとだ!食べよう食べよう〜」








「ってことがあったけど…そういえば繋ぐ人もいるし繋がない人もいるってことは…………どういうことだ?」
「「バカヲルーーーーー!!!」」
「うわあ鈴原君も相田君も急に叫んでどうしたんだい?」
「そこは繋ぐとこやろ!」
「え?なにそれ?」
「なんて愛のない…!」
「愛ならあるよ。僕はなまえを愛してるよ。」
「本人に言えドアホゥ!」
「ていうか、結局君たち何が言いたいの?嫉妬してるだけ?」
「ちゃうわ!」
「もっと愛情確かめあった方がいいんじゃないかってアドバイスしてやってんだろ〜?」
「彼女も居ないくせに…」
「シンジなんか言ったか!」
「いや、何も言ってないよ。何も聞いてないし…。」
「シンジ君も聞いてたんだ。ねえどう思う?僕は何か改善するべきなの?」
「知らないよ…なまえ本人に聞けよ。寄るな。」
「ワシらからみたらぜ〜んぜんお前がなまえのこと好きって伝わってこないでえ!」
「なまえも不安になっちゃうんじゃないか?」
「なまえが?」
「なってないと思うけど…」
「シンジは黙っとけ!面白い事になりそうなんだから!」
「じゃあ僕どうしたらいいの?」
「よしきた!それはだなあ…ごにょごにょ…」
(なまえ憐れ…)

シンジはなまえに心の中で合掌した。


「カヲル?いる?そろそろ帰らないー…」
「あっ丁度いいところになまえ!」
「えっ何?」
「行ったれ渚!」
「うん。」
「え?え?何?」
「なまえ。」
「…はい?な、なんでしょう…」
「好き。」
「…え?」
「大好き。」
「ちょ、ちょっと待って。急に何」
「愛してる。」
「待ってって!なんなの、ここめっちゃ皆居る教室なんだけ…ちょっと顔近い!なになになに…うわあっ!」
「キスしよっか。」
「ちょ!無理待って降ろして!」

彼は彼女を所謂お姫様抱っこをして更に顔を近づけてくる。
鈴原やケンスケがヒューヒューと野次を飛ばしてくる。女子達はキャーキャーと悲鳴のような黄色い声をあげて頬を赤くしてこっちを見ている。

こっちだって頭から湯気が出そうだ。頭がくらくらする。怒ってるわけじゃないけど。何が何だか訳わからないし恥ずかしすぎるということは分かった。

「まっ…、ま…、待ってってば!!」
「ぶっ」

私は持ってた鞄を思いっきり彼氏に向かって振った。
そのまま走って逃げた。

「〜いったい…あっ、待ってよ!」

えええええ追いかけてきた、どうしよ、足、早く、ないのに、

「なんで逃げんの?!」
「なんで、って…」

こっちが聞きたいよ!なんで急にあんなことしたんですか!
…どうせ鈴原達になんか吹き込まれたんだろうけど。

とりあえず人が居ない方居ない方に走ってたらいつの間にか屋上に着いちゃった。
ベタだけど夕日に照らされてて誰も居ない屋上に息切らして入っていくと、もうすぐ後ろに彼が追いついてた。

「…捕まえた。」

息ひとつあげてない彼に後ろから抱きすくめられる。私はこんなに息切らしてるのに。走る前にも心拍数あげられてるせいもあるか。

「なんで逃げんの?」
「はあ、や、こっちが、なんで…、っはあ、なんで急にあんなん…」
「やだった?」
「嫌っていうか…、はあ、急すぎるし、皆いるし、はあ…恥ずかしいし…、うん…やだ。」
「おかしいなー。鈴原君たちが言ってたのと違う。」
「…何言われたの?」
「僕が何もしないから、気持ちが伝わってないとなまえが不安になるから積極的になれって。それで彼らにも僕の愛を疑われたから証明してやろうと思って。」
「…そう。」
「なまえは嫌だったの?」
「…、ああいう風に言われたり、思われたりするのは、嫌じゃないよ。嬉しいです…」
「じゃあなんで?」
「…何もなくったって、不安になったりしたくないよ。ただ一緒に帰ったり、ちょっとでも多く傍に居てくれてるから、不安にならないし、十分だし…。」
「でも、恋人同士はもっと触れ合うものだって聞いた。」
「そうかもしれないけど、その…私、カヲルの事好きだよ。」
「うん。」
「…だから…さっきみたいに近かったり、その、それ以上の事をしたりするには、私、凄く緊張します、恥ずかしいです。」
「そうなの?」
「そうなの。だから、無理にそんな事、常にしようとしてなくていいから。」
「別に、無理になんてしてないよ。さっきは確かに鈴原君たちに言われてやったけど、言ったことは全部本当だし、なまえに触れたいのも嘘じゃない。」
「…」
「好き…」
「だ、だから!その…!」
「照れてる?」
「そう!そうなの!だから、心の準備も、私、必要というか…!」
「そうなんだ。」
「うん、そうなの。だから、えっと……!」
「ふーん、じゃあ、待っててあげるね。」
「……うん。ありがとう。」
「いいよ。恋人だからね。」

そう言って笑った。ずっと抱きしめられてた腕が私を解放した。すっごいドヤ顔だった…私の彼氏。

「帰ろうか。」
「…うん。」


うなずいて私は彼の手を取って歩きだした。








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