※何故か普通に冬。








「さっっっむーーーい」

放課後の帰り道、冬だと6時でもう真っ暗だ。
学校内も寒かったけど、建物を出るとやっぱりもっと寒い。

「そうだね。なまえは足が出ててもっと寒そうだ。」
「男子はズボンあたたかそうだねえ…」
「…なまえはスカート、ちょっと短いんじゃないかい?」
「普通だよ。皆このくらいだよ。」
「…直す気はないようだね。」
「うん。でも寒い…夜は更に冷えるねえ…」
「でも空が澄んでるから星が綺麗だよ。」
「わーほんとだー!綺麗だね。」
「うん。」
「あっオリオン座だ。」
「なまえは星座に詳しいの?」
「ううん。オリオン座くらいしか見分けつけられないよ。カヲルの方が詳しそうに見えるよ、見た目。」
「僕もよく知らないさ。」
「だよね〜。聞いたことないもん。星の話なんて。」
「うん。それに、星をじっと見ているより、僕はなまえを見ていたいからね。」
「うっわあー、キザだなあ。」
「そうかい?」
「そうだよもう…。」
「ふふ、照れているね。」
「…別に、ちょびっとね。」
「なまえは照れ屋さんだね。」
「カヲルがキザ男だからいけないんだよ。」

二人並んで星達の照らす道をてくてく歩いていく。
寒くて速足になってしまうのを抑えた。カヲルとなるべく長くいられるように。
カヲルもほんとはもっと長い足で速く歩けるはずなのに、私に合わせてゆっくり歩いてくれる。もしかしたらカヲルも私とおんなじ事かんがえてるのかもしれない。

「それで、オリオン座はどの星なんだい?」
「ええと……あれ。あの3つならんでるのと4つの四角っぽいやつ…。」
「ふふ、あれじゃわからないよ。」
「だって寒くて指差そうにもポッケから手が出せないんだもん…」
「じゃあなまえ、一瞬でいいから、こっちの手を出して。」

カヲルはポケットにつっこんでた片手を出して差しのべてきた。

? 何だろ?
寒いからしぶりつつも、じゃあはい。と言ってカヲルの手に私の手を重ねると、私の手を掴んだカヲルの手はまたカヲルのコートのポケットの中に戻っていった。

「こうした方があたたかいだろう?」
「う、うん…」

また恥ずかしいことを…

「あっでもカイロだ。あったか〜い!」
「ふふふ。」
「カイロいいなあー。もう片手にも欲しい…。」
「…僕が2人いればね。そうすればなまえの両手をこうやって暖めてあげられるのにね。」
「え〜なにそれ。」

カヲルが2人いて、両側挟まれてる所をばっちり想像してしまって笑った。

「うーん…でも…2人も居なくていいよ。」
「どうして?」
「だってもしかしたらもう1人のカヲルは、別の人を好きになっちゃうかもしれないじゃん。それは…うーん、嫌だなあなんか。」
「僕なんだから、なまえの事を好きになるさ。」
「そうかなあ。」
「そうだよ。」
「……それはそれで…、2人もカヲルが私のこと好きになってくれたら、幸せすぎて死んじゃいそうだから、やっぱカヲルは1人でいいよ。」
「……ふふ、可愛いことを言うね。」

立ち止まったかと思ったら、ポッケに入れて繋いでる手と反対の手で私の頭を撫でてくすくす笑っていた。
恥ずかしいからやめてよと、頭を傾けてカヲルの手を避けようとして、私はポッケで繋いでる手を引っ張りつつ歩き出したけど、カヲルはまだいつもよりもニコニコ笑って嬉しそうにしていた。

「ふふ、…じゃあ僕もなまえをたくさんくださいなんて贅沢は言わないことにするよ。」
「たくさんて…そうして。」
「でも、1人でいいから、その代わり、約束してくれるかい?」
「何?」
「ずっとどこにも行かないで、僕のそばにいるって。」
「…………カヲルも誓うならいいよ。」
「もちろん。誓うさ。」

カヲルはまた立ち止まって私にちゅっとキスをして、また反対側の手で私を抱きよせた。

「…絶対だからね。」
「うん。」
「これ呪いの誓いだから。絶対やぶっちゃだめだからね。」
「ふふ、あながち間違ってないね。もし僕が破るときがあったら、それは死ぬときだよ、きっと。」
「死ぬのも駄目だから…!絶対、だめだからね!」
「…なまえもだよ。この誓いは破っちゃだめだ。」
「うん。」

そうしてまたキスをした。
呪われた私達を真冬の空の星達だけが見てた。










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