今僕は電車に揺られている。

なんでかって?
今日はシンジくんやなまえ、ファーストやセカンドといったメンツで遊園地っていうのに行って遊んできたんだ。

どんなところかと思ってたけど、うん、楽しかったと思うよ。

それはいい。それは置いといて、今はその帰り道ってわけさ。
もう日も沈みそうな時刻で、皆バラバラ別れて帰って行って、僕はなまえと同じ方向だから一緒に電車に乗ったんだけど…。

彼女、いつの間にか寝ちゃったみたいだ。途中までは話したりしてたんだけど、ふと途切れたと思ったら…。

随分楽しそうにはしゃいでたし、疲れたんだろう。起こさない方がいいのかな。

でもなまえってば、僕の肩に寄り添って寝てしまったんだ。

どうしよう。なんて、なんで僕はこんな気持ちになっているんだろうか。
どうもこうも疲れて寝てしまってるなら起こしたら可哀想だし目的の駅に着くまでは起こす必要もない。

そのはずなんだけど、なんだか妙に落ち着かないんだ。

なまえの温度が僕の左肩に感じられて、小さく規則的に揺れるなまえの体が、息を吸ったり吐いたりしてるのがわかる。
なまえの髪が、すぐ後ろの窓から見える夕日に当たってオレンジを帯びていた。眩しいのか俯いている。

僕は何もすることが無いし、暇だし、向かいの窓をぼんやり眺めるのも飽きて、なまえを見つめた。

……睫毛が長い。

こんなに近くでゆっくりまじまじ見たこと、そういえばなかった。でも
多分そういう機会がある人は他に何人も居ないだろう。

こんなに間近になまえを見ることができたのは、多分、僕だけ?
シンジくんとか、他のクラスの人も見たことないだろう、多分。


…………ああもう、よくわからない。
なんで僕こんな事考えてんの?いくら暇だからって別に必要ないことだよね。

「……ちょっとなまえ起きてよ。」
「へ………あれ……何これ、私寝てた…?」

よくわからない事考え始めてしまうくらいなら起こそう。
なまえはちょっと声をかけただけで起きたけど、まだ全然起きてないような眠そうな声だ。

「あ…ごめん、寝てた…もしかして私寄っ掛かってた?」
「…うん」
「うそ、ごめん。」
「別に謝らなくていいよ。」
「でも、重くなかった?邪魔でしょ。ごめん〜…。」
「別に、重くもないし邪魔でもなかったけど。」

なまえは顔をこすりながら、でも申し訳なさそうに謝ってきた。

そんなことは関係ないんだけど。

むしろ邪魔っていうより、…なんなんだろう。
とても表現しにくい。

左肩のなまえが暖かくて、とても心地良かったし、ずっとこの時間が続けばいいように思った気もするし、でも同時に気恥ずかしくて、心臓はどきどきするし、はやくこんな状況から抜け出したいような気もして…

なんでこんな気持ちにさせられるんだろう。

「え〜でも申し訳ないです…」
「なまえって…」
「えっなに?」
「魔法使いかなんかなの?」
「…はあ?」

なまえは拍子抜けしたような声を出したけど、僕は魔法にでもかけられたんじゃないかっていうふうにまだどきどきしていた。

























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