どんな魔物も退治し人々の尊敬を一身に集める英雄、勇者。
何の取り柄もないはずの俺が憧れの勇者に選ばれ、こんなにうまい話があるわけないと思いながらも村人達にちやほやされる快感に抗えず、流されるまま故郷の英雄として魔王討伐の旅に出た。旅の途中で頼もしい仲間もできた。華々しい勇者としての人生が待っていた、はずなのに。

どうしてこんなことになった?

「ひ、ぎぃ、無理、むり気持ち悪いぃッ」

俺は今、何本もの触手を生やした気色の悪い魔物に服を破かれ、舐め回すように身体に這った触手が吐き出す粘液によってびしょ濡れになっていた。その魔物は一見何かの植物のように見えるが、明確な意思を持って俺を弄ぶ。

「頑張ってください勇者。我々は今MPが足りません。貴方にかかっているんです」

「やっぱむりだって…!何で敵のHPとMP減らすために俺が犯されなきゃなんないの…!もっと他に方法がッあ、ちょ、そこはぁっ」

触手がペニスに絡み付き、俺は悲鳴をあげる。触手はその一本一本に意思があり、自立しているかのように自在に動き回っては男の弱い部分を責めあげてくる。
仲間である賢者と武闘家は、今まさに魔物に犯されようとしている俺を心配そうに見つめていた。

立ち尽くしているだけの賢者と武闘家だが、二人とも駆け出しの見習いには見えない。むしろ手練れの雰囲気を感じさせ、仲間になってくれた時は狂喜した程だった。
しかし、いざ共に旅に出て魔物に出会うとやれMPが尽きそうだの体力が持たないだの言い出しては俺を魔物と戦わせようとする。勇者になったばかりの俺のHPとMPではすぐに限界が来てしまい、今この魔物と出会ったことで窮地に立たされていた。
このままではパーティーが全滅してしまう。そこで賢者が考え出した案がこの「魔物と交尾してHPとMPを搾り取り、弱らせてから討つ」というものだった。

断固拒否した俺だったが、ここで死にたくはない。それに魔王の首を持ち帰るまで村には帰れない。ここで帰れば死ぬまで笑い者になるだろう。旅から逃げ出した情けない息子を両親はどう思うだろうか。
背に腹は代えられない。賢者が言うのだからこれが最善の策なのだろうと俺は賢者の作戦を受け入れることにした。

偶然だろうか?賢者は魔物を誘惑するフェロモンを放出する薬を持ち合わせていた。賢者からその薬、小瓶に入ったピンク色の怪しげな液体を受け取り覚悟を決めて口に流し込む。
薬を飲んだからといって俺の身体には何の変化も起こらないように思えた。が、魔物側はそうではなかったらしい。興奮したようにうねうねと触手を動かすと目にもとまらぬ速さで俺をひっ捕らえ、ドプドプと触手の先端から粘液をまき散らしながら俺の服を引き裂く。そして俺を触手で雁字搦めにし、出産する時のような大きく脚を開脚したような体勢で固定した。

これが先程までの話だ。


「あっあっそこ、やめッ」

触手は敏感なペニスの先端に絡み付き、扱くような動きをする。ぞくぞくと快感が背筋を上っていく感覚に身体を震わせながら、「そもそも犯される役は賢者でも武闘家でもよかったはずなのにどうして俺の役目になっちゃってるんだ?」などとぼんやり考えていた。

「いぎッ、待、あ゛ぁっ、痛、いだいッやめてぇっ」

触手は生殖するための穴を探すかのようにずりずりと俺の身体をくまなく這い回ると、反応の良い下半身を重点的に責め出した。そのうちペニスに絡み付いていた触手の中で比較的細い触手が俺の尿道に入り込もうと身を捩るようにしてペニスの先端を刺激する。
ぬるつく粘液のおかげで傷が付くような事はなかったが、尿道を犯される焼けるような痛みが脳天を貫いた。
普通なら一生犯される事はないであろう部位をこじ開けられる痛みと情けなさに涙が滲む。遠くから「頑張れー」という仲間達の声がする。応援するぐらいなら代われ。もう勇者やめたい。怖い。気持ち悪い。

「う゛ぅ、いたい、いたい、もうやだッぅぐあああああっ!」

ずるずるとその身を俺の尿道に埋めていく触手は、やがてその動きを止めた。狭すぎる尿道をこれ以上突き進むのは難しいと悟ったのか、触手は関心を失ったかのように乱暴にペニスに突っ込んでいたものを引き抜く。尿道の内壁を勢い良く擦られ、射精に似た感覚と熱く鋭い痛みに俺はのたうち回った。

「ひっ、はひ、も、帰りたいぃ…グス、うぐ、」

平凡な田舎での生活が走馬燈のように頭を巡る。村には帰れない。でもこれじゃあ相手の体力を削る前に俺が死んでしまうかもしれない。
そんな俺の気持ちを知る由もない魔物は、生殖に適した新たな穴を見つけたようだった。ペニスの更に奥、隠された窄まりの具合を確かめるように入り口をぬるぬる撫でる。嫌悪感と恐怖に涙が零れ落ちた。

「勇者、もう少しの辛抱です!大丈夫、今の貴方はとても可愛い!」

「頑張れ勇者!耐えろ!そのうち気持ち良くなるから!」

「う゛っう゛っ、むりぃ、ひ、ぎッ!」

触手の先端がアナルにめり込み、その衝撃に呼吸が止まりそうになる。前戯の概念など持ち合わせていない魔物は力任せに自身をねじ込んでいく。本来挿入するための場所ではないそこは粘液でしとどに濡れているとはいえ、ひきつるような痛みを生んだ。
内臓が抉られるかのような衝撃に暴れる俺を宥めるかのように、触手は俺のペニスを愛撫し出す。痛いのか気持ち良いのか気持ち悪いのか、混ざり合ってわけのわからなくなった俺は悲鳴のような喘ぎを漏らすだけだった。

「う゛、あ゛、あ”ぁッ」

俺の苦痛を余所に魔物はじゅぶじゅぶと乱暴にピストンしながら大量の粘液を吐き出していく。腹の中からゴボゴボと嫌な音が聞こえ、内壁を擦られる度に痛いようなむず痒いような妙な感覚に襲われる。触手をくわえ込んだアナルから溢れ出る粘液が脚をも濡らした。嫌だ、気持ち悪いと思いながらも俺のペニスは勃ち上がりかけている。情けなかった。

種が違うのだから孕むことはないとわかっていても、男としての自尊心どころか人間としての自尊心まで傷つけられる。歴代の勇者達もこんなことをしていたのだろうか。

「あッだめ、そこ擦っちゃっ、出っ出ちゃう、あ”ッあ”ッ!!」

「勇者!何が出そうなんですか?」

「え”っ、あ”ッなにっぃ、んん!」

「何が出ちゃいそうなんだ!?ほら、言えよ勇者!」

「あ、せーしでるッああッせーしッゴリゴリしな、で…ーっっっ!!」

突拍子もなく賢者と武闘家に質問を投げかけられ、頭の回らない俺は恥ずかしい言葉を叫んでしまう。何故そんなことを俺に聞くのか、二人の言葉に違和感を感じたが触手の突き上げに何も考えられなくなってしまっていた。
ごりごりと前立腺ごと太い触手に体内を擦られ、ペニスまで扱かれる。嫌だと思いながらも射精の欲求に適わず、身体を痙攣させながら俺は達してしまった。
俺が射精したのを喜ぶかのように触手の動きは速くなり、嫌悪感と狂いそうな程の快感に挟まれ悶え苦しむ俺を撫で回す。体中粘液でドロドロで自分自身が魔物の一部になったかのような錯覚さえ覚えた。

「う”っう”っも、許、ひぐッあ”!あ”!」

達したばかりでぐったりしている俺の身体を触手は容赦なく突き上げる。腹の中で触手が収縮を繰り返しているのがわかり、俺は青ざめた。
こいつ、もうすぐ俺の中に出すつもりだ。

「やめてッ誰かぁったすけ、中にっあ”!やだぁッ!!」

「勇者!もう少しの辛抱です!!」

「ヒッ、腹がっいぎ、うあ”ぁあ”あ!!」

それは腹の中で洪水が起こっているようだった。触手は一際大きく収縮すると、俺の腸内に叩きつけるかのように大量の精液を吐き出す。既に触手が吐き出し続けた粘液で満たされていた俺の腹は膨らみ、アナルからは漏れ出した触手の精液がビチビチと勢い良く飛び散る。

「あ”っあ”っ嘘、うそだ、ぁ…!」

魔物に犯され中出しされた。きっと俺は人間として越えてはならない一線を越えてしまった。
満足した触手は俺を解放したが、放心状態の俺は起き上がることすらできずにいた。賢者と武闘家はそんな俺に歩み寄り優しい笑みを見せる。
そして賢者は易々と魔物に巨大な炎系の魔法を放ち、武闘家は炎に包まれ悶える魔物を真っ二つに両断した。
燃え上がる真っ赤な二つの塊を眺めながら、二人ともどこにそんな力が残っていたのだろう、そう思った。しかし、そんな疑念も疲労のせいで心の奥底に沈んでいく。

もう疲れた。身体が痛い。現実から逃げ出してしまいたい。二人には申し訳ないけど勇者やめよう。
俺は意識を手放した。





「勇者!貴方が私達の仲間で本当に良かった!貴方がいなれければきっと死んでいました!」

「さすが勇者だな!俺達のために身体を張ってくれるなんて!一生ついて行くぜ!」

目覚めたのは魔物の生息する土地の近隣にある小さな村の宿のベッドだった。俺が目覚めた事に気付いた賢者と武闘家は口々に俺を賞賛した。
言いたいことは色々あったが、二人があまりにもキラキラと輝く瞳で俺を褒めるものだから何も言えなくなってしまった。
こんなに俺を慕ってくれている二人を裏切れない。
それに賢者の魔法のおかげか体力は全回復し、あんな事があったにも関わらず気持ちも幾分晴れやかだ。

宿の外に出ると、村人に取り囲まれた。驚き固まっていると、村人達も二人と同じような輝いた表情をしていることに気付く。

「勇者様!あの魔物を倒されたんですね!」
「私達はあの魔物に困り果てていたんです!ありがとうございます勇者様!」
「あなたはこの村の英雄だ!」

村人は老人から子供まで憧れの者を見る目をしている。俺が勇者に憧れていた時と同じように。
そうだ、俺は勇者になりたかった。皆の憧れの勇者に。
むず痒い嬉しさが沸き上がる一方、自分はその魔物に犯されていただけだという罪悪感に胸が痛む。

「いや、俺は…」

「何を言っているんです勇者。全て貴方の活躍のおかげですよ」

「そうそう。俺達の自慢の勇者だからな」

「そう…かな」


こうしてやめたいと思いながらも、再びちやほやと誉めそやされ周囲に流された俺は勇者を続けることになってしまったのであった。


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