10月18日
「ねー先輩ー。セイタ先輩ってばぁ」
「うるせぇ!話しかけんな!」
「何で今日は機嫌が悪いんですか?言ってくれなきゃ何もわかりませんよぉ。恋人同士に必要なものはコミュニケーションなんですよ、コミュニケーション」
「煩い煩い煩い!おま、お前がっ、ああもう!ほっといてくれ!!」
どうしてなのかはわかりませんが昨日の行為後、先輩は拗ねてしまい朝から僕と目を合わせようとしません。フェラをしてくれないどころか、触れようとしても暴れて喚き散らすばかり。
今日一日分の監視カメラの映像を見てみたりもしましたが、原因となりそうなものは何もなく、お手上げ状態です。
昨日せっかく射精させてあげたのに、何が気に食わないのでしょう。
「仕方ないなぁ」
僕は一旦廊下に出て段ボールの山に向かいました。先輩は非難してきましたが、困った時は大抵道具がなんとかしてくれます。
一つ物を動かしてはガシャガシャと耳障りな音をたてて雪崩が起きる段ボール内。目的の物を探して段ボールをひっくり返す度にアダルトグッズが床に散乱してとんでもない光景になっていきます。
以前先輩が勝手に段ボールを漁ってスタンガン片手に僕に刃向かった事があり、泣いて謝るまでお仕置きするはめになったので危険なものはさすがに隔離してあるのですが。
トイレに行くために必ず通らなければならない廊下。いつか自分に使われるであろう大量のアダルトグッズを前に先輩は何を思うのでしょう。想像するだけで勃ちそう。
「先輩。ちょっと後ろ向いてください」
「…………」
廊下から戻ると先輩はいじけたように自分の膝を抱え、俯いていました。可愛い。
「ねー先輩ー」
可愛いけれど、何度呼んでも反応してくれません。こんな子供みたいな真似をして何が面白いのでしょうか。僕はあんまり楽しくありません。
「せーんぱい。いい加減にして」
「っ、」
躾のなっていない犬にそうするように低い声を出すと、ビクッと先輩の肩が跳ねます。漸く目が合ったのでにこりと笑いかけてあげると、先輩は眉間に寄せた皺を深くしました。…こんな態度をとられる覚えはないのですが。
「ほらー早く後ろ向いてくださいよ」
「……チッ」
先輩は恨めしそうな目で僕を睨むと舌打ちを一回。弧を描く僕の口元が一瞬ひきつったのを見て、慌てて後ろを向いたのでした。
「今のは見なかったことにしてあげるんで、これ見て早く機嫌直してくださいね」
後ろを向いているのを良いことに、先輩の腕を力ずくで後ろ手に拘束し直した後、僕は廊下から持ってきたDVDをレコーダーにセットしリモコンの再生ボタンを押しました。
画面に映ったのは可愛い女の子。あれよあれよと言う間に男達に服を脱がされ、豊満な胸が露わになります。
「お、まえ、」
「こういうの、ずっと見たかったでしょ?」
突然聞こえてきた女の声にすぐさま反応した先輩は、信じられないものを見る目で僕を見ていましたが、甘い嬌声に誘われるように画面を見つめ始めました。
15分も経てば画面の中の可愛くて巨乳の女の子はあられもない格好で、うわ、このAVすごい。えげつない。
「あはは、なにこれ。ありえないと思いません?せんぱ、…あれぇ?どうしたんですか?」
暫く先輩と一緒にAV鑑賞をしていると、当然ですが次第に先輩の様子がおかしくなっていきます。僕は冷やかすようにわざとらしい反応をし、先輩の様子を観察することにしました。
「ぐ…、」
身体を丸め、脚をもじもじさせる先輩。そのペニスは完全に勃起していて、早く触ってくれと言わんばかりに滴を垂らしています。
「わーすごい。先輩のガッチガチだ。これ、好みでした?」
「クソ、見んなっ」
テレビから流れ続けるわざとらしい女の喘ぎ声。どうにかこうにか隠そうと縮こまった身体の隙間から見える先輩のペニスはぴくぴく脈打っていて、もどかしそうで。
先輩、高校生ですもんね。こういうの、絶対好きでしょう?昨日イっちゃったからちんこごしごしされる快感、まだ鮮明に思い出せるはずですよね。僕に触られるのが嫌なら、無理矢理勃起させちゃえばいいだけの話だと思いません?
「うわ、ガマン汁すごい。べちょべちょ」
「も、止めてくれ…!嫌だっ」
「えー?嬉しくないんですか?勃起してるしもっと見たいでしょ?」
「嫌だっつってんだろ!本当にやめろ!見るなよ!!」
手を縛られているせいで扱く事も、股間を隠す事もできず顔を赤らめて泣きそうな顔をしている先輩。
画面を見ないように固く目を瞑っていますが、甘い声と濡れた音が聞こえてくる度にペニスを反応させているので滑稽です。
「オナニーしたくないんですかぁ?」
「したくない!止めろって!もう嫌だぁ!」
「うっそだー。だってこんなに勃ってガマン汁でべとべとにさせてるのに」
「言うな、も、ぅう゛…」
嫌々言いながらしっかり勃起している事を冷やかしていると、先輩はついに泣き出してしまいました。耳まで真っ赤にしてぐずぐず鼻を啜って、情けなくって可愛い先輩。
「泣いたってダメですよ。先輩のためにいっぱい買ったんですから、全部見て感想聞かせてもらわないと無駄になっちゃうじゃないですか」
「も、も、いやだ、こんなの、」
手に持っていたDVD数本を見せると、本格的にぐずり始めてしまいました。あれ、喜ぶと思ったんだけどな。
先輩は少し不安定な人なので、一度こうなってしまうと落ち着くまでに時間がかかります。仕方がないので暫く放っておいてあげる事にしました。もちろんAVは垂れ流しのままで。僕って優しい。
「っ、う、ん」
「あーあー悪い子だなぁ」
僕は別室からシーツに屹立した自身を擦り付ける先輩の様子をモニター越しに見ていました。
べそをかいていた先輩は僕が部屋から出て行ったのを確認すると、暫くは俯いていましたが、誘惑に負けたのか再び画面を見つめ、手を縛られ不自由な身体をうつ伏せにしシーツにペニスを押しつけ始めました。もぞもぞとぎこちなく腰を振る先輩は、自分の姿がカメラに収められていて、録画までされているなんて思いもしないのでしょう。
「イきたいなら僕に頼めばいいのに」
犬みたいにへこへこ腰を振っている間抜けな先輩。
シーツの方が良いなんて、ちょっと心外です。
「ちょっと先輩、勝手な事しないでくださいよ」
「っ!?あ、うわぁ!な、」
わざと大げさに音をたてて扉を開けると、先輩は面白いくらい身体を跳ねさせてテレビから背を向けると、口をぱくぱくさせ言葉にならない言葉を紡ぎます。
慌ててシーツの上で丸くなって身体を隠していますが、シーツがカウパーで濡れているのも、もうすぐイけそうだったのに邪魔が入って生殺し状態なのも全てお見通しです。
「今なにしてました?」
「…何もしてねぇよ」
自信のない小さい声。先輩はばつの悪そうな顔をして、僕と目を合わせようとしません。叱られた子供みたいです。
「本当に何もしてないんですか?」
「っ、煩い!してないって言ってんだろ!」
疑いの目を向けてじろじろ先輩を見ていると、ぎゃんぎゃん喚き始めました。先輩の言う事を信じるのなら、僕がさっきモニター越しに見ていたのは夢か幻かそういう類のものなのでしょう。恋人の言うことは信じてあげなくてはなりません。
こういう状況で何もしないって事は、物足りなかったって事ですよね、先輩。いやあ、気付かなくって申し訳ないです。
「ちょ、やめろ!何する、ぎゃっ」
「ちょっと暴れないでくださ、っ、痛…」
僕はベッドに横向けになって羞恥にぷるぷる震えている先輩を無理矢理仰向けに転がしました。脚の自由も奪ってしまおうとバタバタ暴れる身体を押さえつけ、紐で縛りつけようとした時です。抵抗しようと滅茶苦茶に動く先輩の脚が僕の顔面を蹴りつけました。
「ぁ、あ、お、お前が悪いんだか、っぐ!」
バチンと乾いた音が部屋に響きます。ついカッとなって先輩の頬を力一杯叩くと、先輩は一瞬呆然とし、そしてみるみる顔を恐怖の色に染めていきました。
「い、今のはお前が無理矢理、」
「ハァ…もういいですって」
「わ、わざとじゃ、だって…、っ?」
「おーい先輩?聞いてます?」
先輩はパニックに陥ってしまったようで話を聞いてくれません。顔を真っ青にしてもごもごと言い訳めいた事を呟いている先輩があんまりにもみっともなくて、可愛くて僕は先輩の口を塞ぐようにキスしました。
「む…ぐ、ん゛、」
ビクリと震える身体。固く閉ざされた唇を一舐めすると、先輩は身を捩って僕から逃れようとします。
「は、…キス初めてですね」
「な゛っ、なっ、や、やめろよ!」
さっきまで色をなくしていた顔を真っ赤にさせて、違う意味で慌て始めた先輩。可愛い、可愛い。叩いちゃってごめんね先輩。
「クソ、ふざけんな…」
先輩は小さく呟いて、肩口でごしごしと口を拭い出しました。
「なにも拭わなくても…」
「うえ…最悪」
「先輩…聞こえてますよ」
前言撤回、可愛くないのでお仕置きします。初めてのキスなのにムードもクソもないなんて!
僕は抵抗する先輩の脚と格闘し、どうにかこうにか折り曲げベルトで縛り開脚させると、一旦ベッドから離れました。
画面の中には顔射されてぐったりしている女の子。僕は先輩の痴態さえ見られればどうでも良いので、DVDのくだらない演出は無視してさっさと別のDVDをプレイヤーにセットし、再生ボタンを押します。
「な…にしてんだよお前、も、嫌だって…」
「別に見て何かが減るわけじゃないし、いいじゃないですか。あ、後で感想文でも書いてもらおっかな」
「っ、変態。クソホモ。俺が勃起してるのがそんなに楽しいのか。…勝手にしろよ!」
「はいはい、何とでも言ってくださーい」
先輩は眉間に深い皺を刻み、諦め混じりかつ恨めしそうな声で言いました。ふてくされたように枕に顔を埋め、画面を見ないようにしています。それでもスピーカーからはねちょねちょぐちょぐちょ。ああんすごいだの、もっとしてぇだの、阿呆みたいな音声が垂れ流しになっています。
購入したDVDは全部で4本。さて、先輩はどれが好きかな。
テレビの画面が一面肌色になってから二時間ほど経とうとしています。僕はキッチンに立って今日の夕飯を作りながら、切ない顔をした先輩からの視線や乱暴に僕を呼ぶ声を無視し続けていました。
嬌声。粘着質な音。男優のくだらない煽り。先輩の息づかい。まな板を包丁が叩く音。
アダルトビデオを流しながら料理するなんて本物の変態になった気分だ、なんてぼんやり考えていると、小さく掠れた声が僕の名前を呼びました。
「あ、さいぃ…」
「…なんでしょうか」
いつもは「おい」だったり「お前」と声をかけてくる先輩が珍しく僕の名前を呼んだので、僕はとりあえず無視をするのをやめ、先輩と目を合わせてあげます。先輩はグズグズに蕩けた顔を歪ませて、縋ってくる犬のような情けない声を絞り出しました。
「さ、」
「…さ?何ですか?」
「さ、さわって…ほし、」
先輩のだらしないペニスはガッチガチのぐっちゃぐちゃ。股の間でピクピク動いてはトプトプと蜜を垂らしています。
眉を八の字にした先輩は茹で蛸みたいに顔を真っ赤にして恥ずかしそうに、そしてもどかしそうに熱に浮かされた瞳で僕を見ました。
「あれぇ。変態とかクソホモとか言ってませんでしたっけぇ」
ごくり、と喉が鳴るのを誤魔化して、意地悪な笑みを作ると先輩の目の縁にじんわり涙が溜まります。
「ごめん、ごめんっ謝るからぁ…っ」
もぞもぞとシーツの上で先輩の身体が踊ります。半開きの口から覗く濡れた舌が僕を誘惑していました。
「ね、も、つらいっ…たのむ、」
「…いつもそうやって可愛くしていれば良いのに」
我慢できなくなってベッドへと足早に向かい、大きく開かれた先輩の脚の間に顔を近づけると、先輩と目が合いました。期待しているような、それでいて不安そうな顔。
「触ってほしいんですか?」
「ん、」
「手で?口で?」
「…っ、ぅ゛う…」
「ねえ、言ってくださいよ。可愛くおねだりしてくれなきゃしてあげません」
羞恥心は残っているのでしょう。くしゃりと歪んだ今にも泣き出しそうな顔にゾクゾクします。
「ねえってば」
「や、だ、っ」
「辛くないんですか?これ」
「ん゛っぅ、あ゛!っ、やめんなっ、はぁ、」
先輩の大好きなペニスの先端を悪戯に軽く撫でると、先輩は下肢をぶるぶる震わせ、下唇を噛みながら切ない声をあげました。やめんな、なんて普段は口が裂けても言わないくせに。覆い被さって滅茶苦茶にしてやりたくなるのをぐっと堪え先輩から離れます。
「はぁ、は、っく、ぅ、」
中途半端に快楽を与えられ物欲しそうな顔をする先輩。静かに僕を見つめる潤んだ瞳と半開きの口から零れる熱い吐息に、僕の心臓は高鳴ります。
「先輩…言って?」
その可愛い口で僕を強請ってほしい。熱に浮いた先輩の顔を見ているとどんな我が儘だって叶えてやりたくなって。ああ、犬みたいに縋っているのは僕の方かもしれない、なんて考えてしまうのでした。
先輩。先輩。好き。大好き。
肌理の細かい滑らかな頬をそっと撫でれば、先輩はくすぐったそうに身を捩り悔しそうな顔で僕を見つめます。
「く…ちでして、」
湯気が出そうなほど真っ赤な顔をした先輩は歯を食いしばりながら羞恥に俯いています。
か細いその声が耳に届いた瞬間、僕は幸せで幸せで、滴を垂らして揺れる美味そうな先輩のペニスにしゃぶりつきました。
「っあ゛ー!あっ、すご、ぃい」
「ふ…っ、ね、先輩。口だけなら女の子と変わらないでしょう?」
だからもっと僕を求めてくれてもいいんですよ。
一旦口を離して訪ねてみたけれど、涎を垂らしてぶっ飛んでいる先輩には届いていないようでした。
「あっ、あっ、は、っあ゛ぁ、」
「ひもひぃ?」
「あ゛!喋っちゃ、ん、ん゛、きもち、あ゛ァ!や、イ、ぐぅっ、」
口をすぼめて先端を吸うと、先輩は仰け反って悦びます。長時間お預けされていたせいでしょう。ものの数十秒で先輩は足の指をぎゅっと丸め、ガクガク痙攣しながらあっさりと達しました。
口の中にビュッと飛んだ濃いものを愛おしくて、僕は頬を緩めます。
「ハァッ、はぁあ、…は…、」
「早かったですね。あ、また勃ってる。ふふ、もう一回します?」
「………す、る」
一度射精して冷静になった先輩は早漏だと言われた事でこちらを睨みつけてきましたが、瞬時に元気を取り戻した自身に情けない顔をした後、ぶっきらぼうにそう言ったのでした。
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