05
「月光さーぁ……知ってるぅ?」
未珠は崩した脚に閖葉の頭を乗せながら、ゆるやかと唇をしならせた。
──僕が一体何を知っていると言うのだろうか。
頭を振って、「何についてですか?」と無知を装うように告げれば、優しげな笑みはどこか、悪戯めいた──そう、まるでチェシャ猫のような気味の悪さすら感じるものへと変わった、ように見えた。
「ゆりちー……あぁ、閖葉ちゃんから、月光の体質についてどうして協力することになったかぁ……とか、どういう風に聞いている?」
妙な事を聞くものだ、と思った。
視線は自然と、真っ青な顔で未だ目を覚まさない少女へと向いてしまう。色素の抜けた銀の髪が、蛍光灯の陰気な光を弾いた。
「……詳しくは。ただ、未珠さんに頼まれたのと、そう言われたきりでしたけど」
意図の読めない質問に、光希は困惑気味に眉を顰めた。
──それが何だと言うのだろうか。
未珠はますます笑みを深めると、かくりと首を傾ける。
「あたしはねぇ、月光。そんなことをわざわざ、操神の中で当主の姉よりも力を持ってしまった子に頼むような真似、しないよぉ」
払えるものがないからね、と言い足して、未珠はにしゃりと笑った。
──……は?
光希の思考が止まる。今、未珠は何と言ったのだろうか。
「……あや、がみ……?」
「そおだよ。操神。彼女の本当の名前はねえ……──」
「……みた、まさん……、そこから、さきは……わたしが」
こめかみを押さえながら、閖葉が上体を起こした。
真っ青な顔のまま、小さく頭を振って、それから光希を真っ直ぐ、見詰めた。
「……わたしが、未珠さんにお願い、したんです。
彼の、──光希くんの、力にならせてください、って」
160521
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