01
銀の髪がきらきらと光を弾く。──長い髪をそよ風に遊ばせる姿を横目で見ながら、月方光希は貯水槽に背を預けた。
陽の暮れかけた空は夜と混ざり合い微か、紫めいている。楽しげに歌を口遊む少女──ユリの制服の裾がはためいて、生白い脚がちらちらと視界を掠めた。
「──わたしね、この時間の空の色、好きなんだ」
歌が止む。靡く銀を片手で押さえながら、光希と目を合わせて、ユリは小さく微笑む。
「黄昏時。誰そ彼時。どこか、遠くへ行けそうな気がするの」
湖面の様に美しい碧眼が、沈みかけた陽の照り返しを受けて、紅玉を宿す。
スカートの裾が一際強い風にはためいて、ばたばたと音を立てた。
「僕は陽が出ている時間は余り好きじゃない」
「……ふふ、うん。そうだよね、知ってるよ。それに、光希くんは夜のほうが似合うもの」
紅玉を宿した碧眼は、まるで宝石の様に、光希の目には見えた。
この世に二つと無い至宝。──嗚呼、喉が渇く。
「──ユリ、」
自分を見る双眸を片手で塞いだ。ユリは小さく頷いて、制服の襟元をずらす。白い首が、暮れ掛けの陽に生々しく照らされた。
「いいよ、あげる。──いっぱい、あげる」
160110
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