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「い」らずのもり

 鳥が鳴いている。
 風のさざめきは思うより静かで、葉の擦れる音に心地よさも覚えた。

 ──此処は不入の森。
 大昔、神子たちが暮らしていた神聖なる森。神聖だった森。

 清らなるものの象徴だった神子は、穢れに当たらないように、この自然要塞たる森で育てられていた。
 芳しいほどの神気は、そのうち世話役の人間すらも魅了し、惑わせ──

 此処はいらずの森。
 もう誰もいない、穢れなき森。

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