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「あ」いしてる、だなんて

 ぱっくりと空いた腹の穴から赤をどくどくと垂れ流す男を見下ろして、柔く首を傾ける。濁った両目の瞼を下ろしてあげてから、片手で玩んでいたナイフを肉塊と成り果てたそれに突き立てた。酷い音がした。思っていたよりも胸躍らない、酷い音だ。
 やれやれと肩を竦め、唇に付いた血液を舐める。──余り美味しいものじゃない。吸血鬼じゃあるまいしねぇ、と小さくぼやいてから、閉め切ったままのカーテンを開け放った。外は快晴。良い洗濯物日和だ。

「あんたもそうは思いませんかぁ……、っと、そうだった、あたしが殺したんだった」

 失敗失敗。軽い調子でこつんと額に軽く拳を宛ててから、返り血塗れのベッドに勢いよくダイブした。この男も違った。運命の人なんかじゃなかった。偽物だった。嘘吐きは嫌いだ、反吐が出る程に。だから、殺した。当然の報いだ。

「あーぁ、どこにいるんだろ……。あたしの、運命の人」

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