デイドリーム/夢/触れたい
──嗚呼、これは夢だ。とびきり幸福で、とびきりつらい夢だ。
手を伸ばす先に、彼女がいる。
美しい夜色を持つ、儚い少女。己が唯一、愛した少女。
「阿頼耶さま」
笑みが此方を見据える。幸せそうな、愛らしい笑み。
呼び返そうとして、声が出ない事に気付く。──嗚呼、これはやはり夢だ。
「阿頼耶さま、聞いてくださいませな」
──ああ、聞くよ。幾らでも。君の声がまた、聞けるのなら。幾らでも、聞きたい。聞かせてくれ。
「阿頼耶さま、──」
嗚呼、声が遠ざかる。
遠くなる。──また、君に触れられないまま。
久方ぶりに流した涙はいやに塩辛く感じた。
140807 あらせり
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