甘く零れる涙
金の細く柔らかな髪に、蒼い瞳。俗世間の汚れなんて知らないような白いワンピースが、目に眩しい。今、ベッドにすいよすいよと寝息を立てて横たわるそれの、尖ったエルフ特有の耳をつつく。
「ん、ぅ……」
桃の唇から漏れ出た何処か熱の籠った吐息に、悪戯心が疼いた。
輪郭をなぞる。指の腹で撫でる。くすぐる。
「は、んぅ、んん……」
ぼんやりと意識を覚醒させたエルフの少女が此方を見た。透き通るような蒼い瞳が、情欲に濡れているように見えたのは、己の下心の所為だろうか。──それとも。
「──cit*e(来て)」
熱い、熱い吐息混じり。伸ばされた柔らかな両手が、かがんでいた東の頬を撫でる。笑みは柔らかく、それでいて蕩けたような赤みを含んで。
知らぬ言葉だが、何を言われているかはわかった。
馬乗りになる。汗ばんだ肌に貼り付いた白のワンピースがいやに艶めかしくて、少し目を細める。
脇腹を撫で上げると、びくりと身をすくませ、熱い声を漏らした。耳を甘く噛む。また、びくりと少女の身体が揺れる。額に貼り付いた金の髪を払ってやりながら、肌蹴た胸元に顔を、埋めて。
──残す痕は、果たして。
しなる背を支えるように、腕を差し込む。涙目でいやいやと首を振れど、身体が求めていることを、わかっている。──知っている。
「……欲しい?」
我ながら意地の悪い問いだと思う。
涙に濡れた蒼い目が、熱く、東を、見詰めて。
「ほ、しい」
拙く、言葉にするのを聞いた。
「──あげる」
耳元で囁く。身を捩り、快感から逃れようと、だけれど欲する少女の身体を腕の中に閉じ込めた。頬を伝った涙に口付けを落とす。
──それは確かに涙である筈なのに。何故だかとても、甘く感じた。
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