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決まりごと

 マスターとの約束。
 命を、捨てないこと。ずっとそばにいること。一緒に眠ること。学校に共に通うこと。
 無邪気で無垢な少年。──姿だけは、十四歳の、非力な。

 ──転生を繰り返してきた、吸血鬼の真祖。

「マスター」
「空、しー。ね?」

 リボンを歯噛み、ゆっくりとほどく。吸血鬼特有の八重歯がちら、と覗く。
 そのまま、首元に近付いてきたそれは、首筋に突き立てられる。

「──ッ!」

 びくり、と。身体は震える。
 まるで蜂蜜のような、甘ったるい臭いが部屋中に満ちて。

「やっぱり、空が一番。……空だけ、だよ」

 満たされていく。痺れるような、甘い、甘い感覚。
 疼き、喉奥から漏れる舌足らずな嬌声は、己の耳に、まるで他人の声のように聞こえていた。

「ずっと、僕の所有物(もの)だよ、空」

 まぶたに落ちたキスは、とても、あたたかい。

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