吐き出した激情
「何度言ったらお前は理解するんだ! 私の事は放っておけと言っただろう!!」
軒先に立つ男は相も変わらず、腹立たしい笑みを浮かべている。何も見えていない癖に、全てを見透かしてしまう此の男が、私は嫌いで嫌いで仕方ない。──だというのに!
「真朱さんが心配なだけだよ、私はね」
変わらない。いつもと同じ台詞。決まりきった文句。
「好い加減にしろよ、陰陽師。今の、私は……妖だぞ」
お前の目を奪った、とまでは言わずに。脅しのつもりで、鋭く尖った爪を、男に向かって勢いよく振り下ろそうとし。──ぱしり、と。手首を掴まれ、企みは呆気なく失敗した。
「お止めなさいよ。貴女が傷付くだけです。──真朱」
「っ離せ!!」
掴まれた手首が、いやに熱い。
「わたしを、私を! 人のように扱うな! 私は……私は、妖だ!」
馬鹿ですねぇ、という呟きは、緩やかな風に溶けて、消えて。
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