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僕らの関係

 コインの表と裏。──僕と現の関係性を表す言葉で、これ以上的確なものを、自分は知らない。僕が表であれば、彼女は裏。しかし、彼女が表なら、裏は夢だ。
 おかしな話で、彼女が表だと仮定すると、裏は僕ではなく、夢になる。僕と夢は、互いに裏とも表となりえない。相反する存在、ということなのだろうか? ロスユアンにそんなことを訊ねてみると、彼(或いは彼女)はくつくつと喉を鳴らした。

「簡単な、そう、実に簡単な話だよ、フィニストリア」

 マグカップを机に置いて、じっと、こちらの目を見つめる。

「あの子は、欠けすぎているからさ」

 ──ロスユアンの言葉の意味を捉えかねる。

「君と現くんは互いに補える欠けだが、あの少女の欠けは、あの少女自身でしか埋められない」
「ロスユアン、君は夢を欠陥製品だと言いたいのか」

 空気が冷える。不意に興味を失ったかのように、ロスユアンは視線を逸らした。

「自覚しなさい、フィニストリア」

 “彼女”は諭すような穏やかな声で、かつての名を呼ぶ。

「君がそれを続ける限り、あの子は人になれない」

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