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手に負えない

 ああもう本当に。なんて、苛立ち混じりの声が扉の向こうから聞こえてきた。後三秒程で激しいノック音が──嗚呼、ほら来た。

「信じられない!!」

 ドン、と書類を積み上げ、彼女はマグカップに注がれたコーヒーを一気に煽ると、ああもう、とまた呟いて、椅子に深く腰掛けた。

「どいつもこいつも無能ばっか! 役立たずはいらないっつってんのに!」

 よくここまで転ばずに帰ってこれたなぁなどと考えていたら、その人はきっと怒りの矛先をこちらに向けた。――バレたか。

「なに考えてんのよ!!」

 飛んできた万年筆を避けて、小さく肩を竦める。
 全く、手に負えんお方です。

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