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ゆめうつつ

「……えっしぇ」

 囁きのような呼び声に、伏せていた瞼をこじ開ける。――陽の光が、眩しい。何でここにいるんだっけ、と少し考えて、ああそうだ、昼寝をしていたんだ、と思い出した。貯水槽に背を預け、すやすやと眠るリコリスを見つけたのが……たぶん、二時間くらい前。

「おはよう、エッシェ」
「あー……うん、おはようリコリス」

 幸せそうに眠っていたから、仕方ない、ノートは後で僕がどうにかすればいいよね、と思ったまでは憶えている。――こんな風に呼びに来て、一緒に寝てしまう事も、もう何度目だろうか。思わず乾いた笑いを零し掛けたのを堪え、軽く頭を振る。

「もう、お昼よ、って」
「誰か呼びに来た?」

 だれもきていないわ、と歌うようにリコリスは言った。その膝には既にお弁当が乗っている。――二人分。

「……リコリス、もしかして僕より早く起きてたんじゃない?」

 静かに、こくりと頷いた銀を見て、思わず顔を覆う。

「起こしてくれて、よかったのに……!」
「だって、」

 しゃら、と銀が流れ落ちた。陽の光できらきらと光る髪に、思わず目を細める。

「エッシェ、幸せそうに眠っていたから」

 ――まるで自分の幸せを告げるかのような、蕩ける微笑を見せて。
 もう一度、おはよう、エッシェ。と、リコリスは繰り返した。

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