short | ナノ

闇に紛れて君を探しに

 嗚呼、この世界でもまた、君に逢えなかった。
 幻は自嘲気味な笑みを零して、静かに瞼を閉じた。

 もう、何度繰り返しただろうか。
 君に逢えたこともあった。何度君の遺影を見て、涙しただろうか。

 僕と君の幸せを探して、闇の中を無我夢中で渡り歩く。

 嗚呼、リリス。
 君の深い海の色の髪に触れたい。紅玉のような瞳を見つめていたい。
 しなやかな指に指を絡ませて、柔肌にそっと触れたい。
 華奢な体躯をぎゅっと抱き締めて、ずっとずっと、そうして。

 次こそは幸せになるのだと信じて、幻は裏路地の闇へと姿を消した。

by 確かに恋だった

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