書斎の床で山積みになった分厚い本に囲まれながら読書をしていたら、向かい側に座っていたレムレスが突然抱き着いてきた。驚きはしたものの冷静に引きはがそうと試みたが、「暑い離れろ」と言っても離れてくれなくて。溜息にも似た深い息を吐き出し、レムレスの気が済むまでくっつかせておく。
しかし数十分経っても離れる様子を見せない。暑さがダラダラと押し寄せてきて、もう一度そいつを引きはがそうとしてみたが、しがみついた腕は背中に巻かれたままだった。さっきからそう、本を読もうとしても視界に入ってくるへにゃりとした笑顔に気を取られてしまって本に集中出来ないのだ。


「おい貴様いい加減離れろ。暑くはないのか?」

「僕は暑くないよ。あやちゃんにくっついてられて、幸せ」


ぎゅっと背中に回した手に多少力を入れて、頬を寄せながら笑顔を見せるレムレス。つい可愛いなんて思ってしまった。う、ううう嘘だそんなこっ、こと、思ったりしてないぞ!レムレスに伝わっていないとわかっていても、己の内で葛藤を繰り返す。うーん、と頭を振る私の姿を見ていたレムレスは、キョトンとした後にケラケラと笑い始めた。嗚呼とんだ失態だ、と思いながらも体が勝手に反応してしまい、先程から火照っていた体に熱が増した気がした。


「ききき貴様!何を笑っている!」

「慌てるあやちゃんって、なんか新鮮なんだよねぇ」

「……ほう、この私に向かってそのような事を言ってもいいのか?」


唇の端を歪め、手にしていた本をパタンと閉じる。負けず嫌いの子供のように、変なスイッチが入ってしまったようだ。レムレスが反応する前に腕を掴み、噛み付くようなキスをする。床に押し倒してのしかかれば、レムレスは抵抗すら出来るわけもなく。しばらくしてから唇を離し、してやったりとでも言うように笑ってみせる。大人げないなんて百も承知だ。それでも口が達者なレムレスを黙らせるのは、気が良くなるものだった。
レムレスに言葉で勝てないのは、自分が口下手だからということもあるのだが、残念ながら気付くのはもっともっと先の話。まぁ、未来の私は認めないかもしれないが。この世の中には、言いたいことや言わなきゃいけないことが沢山ある、らしい。いつかはそういう複雑な環境にも慣れるのだろうか。せめて――せめてレムレスに愛を囁けるようになりたい。こっそり、グッと拳を作った。





それもこれも君のせい、



―――
30000打フリリク企画!
レムレス受とのリクエストを頂いたので、あやレムを書かせて頂きました!ぎゅーっ、がお好きなようでしたのでぎゅーさせちゃいました^^
あやちゃんは、レムレス以上に口下手だったら可愛いと思います。
企画に参加してくださってありがとうございました!



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