星がキラリと光る空を見上げると、胸がギュッと締め付けられたような気がした。そんなの気のせいだと思ってみても、苦しくて寂しくて、ちっぽけな僕は押し潰されてしまいそうだった。堅く閉じた口を開いて息を吸い込む。


(彼、は………彼は何処に、行ってしまったのだろうか)


どんなに考えてもわからない。ほっぺたをつねってみても、夢だと思い込もうとしても、寂しさは消えなかった。それが余計に現実なんだと思わせる。この前まで――つい先日まで、一緒に笑って怒って泣いたのに。彼は、気が付いたら目の前から消えていた。ふ、と風がそよぐように自然だったくせに何処かぎこちなくて、すぐバレてしまったけど。


(そうか)


俯きながら重たい足を一歩進めた。ジャリ、と砂が音をたてる。そうか……彼はきっと、僕のことが嫌いになっちゃったんだ。だから何も言わずに、消えちゃったんだ。どうしていつも勝手に、そんなことを。
僕は、知らなかった。一番知っていると思っていた彼のことを、何も知らなかった。それが悔しくて悲しくて、なのに寂しさを紛らわせる術も見つからず、ただやみくもに捜し回った。不思議と、一度たりとも涙はこぼれなかった。






「あの、アコール先生、急にすみません。シェゾ・ウィグィィについて、何かご存知ではありませんか?」

「あら、こんにちはレムレスさん。その、シェゾさんの事なら、私も詳しくは知らないのですが……もうこの街には居ないらしいという噂は耳にしました」

「そんな、どうして……」


予期せぬ理由に、言葉を失う。どうしたのだろうか。何故、わざわざ此処を出なければならなかったのだろう。何故、僕に何も言ってくれなかったのだろう。何も知らない僕が考えても、答えが見つかるはずがない。また、胸がギュッと苦しくなった。
そういえば、と僕はハッとした。シェゾやアルルは、もともと別世界の住人であり、プリンプの国に飛ばされたのは時空の歪みに巻き込まれたことが原因だった。だとしたら、逆の作用が起こったのではないのだろうか。そうしたらつじつまが合うし、「嫌われたのではない」と気休めの程度だが、僕自身への言い訳に出来た。そんなことを考えてしまう僕は最低で、臆病者だ。


「シェゾ」


いなくなった君のことが、心配で心配でたまらない。怪我してない?風邪引いてない?いつか、僕のことも、忘れちゃうのかな。空に輝いていた星は消え、ただ闇だけが広がっていた。まるで彼のようで、懐かしくて愛しかった。静かに頬を何かが伝う。それは穏やかに流れる風に冷やされ、乾いていった。





流れに乗れなかった



―――――
30000打フリリク企画!
切ないシェレムとのリクエストでしたので、シェゾがいなくなった話を書いてみました。彼らはきっと、出会いも別れも突然なんだと思います。
企画に参加してくださってありがとうございました!



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -