※学パロ





青い空の下、みんなを乗せたバスがガタガタと揺れる。いつもテンションが高い人はさらに高く、そうでない人も少し浮足立っている様子だった。そんな彼らが通うのは、全校を合わせても一つのクラスにまとまってしまうような少数高校だから、大きなイベントも一度に済ませてしまう。今回もそう、修学旅行といった高校生活一番のイベントの真っ最中なのだ。この環境に慣れているためか、年の差を感じさせない和やかな雰囲気が漂っている。


「お菓子!お菓子食べようよ!」

「わーい食べるー!」

「ほらみんなもどんどん取って!」


アミティが差し出したお菓子の袋に様々な人の手が伸び、面白いように消えていった。そんな光景を見てつい微笑んでしまった俺の横には、首を傾けて眠っているレムレスが居る。バスに揺られているうちに眠ってしまったようだが、飛行機の疲れもあるのではないかと思う。
バスに乗る前に飛行機に乗った。そのときのレムレスの怖がり方と言ったら……高い場所が怖かったのだろうか、椅子の上で体操座りをしたままずっと体を縮こまらせていた。と思ったら急に笑い出したり。どうしたのかと思い問いてみたら、怖がる自分が可笑しかったらしい。俺の苦笑は欠伸に変わり、気付いたときには眠り込んでいた。





「………ゾ、シェゾってば」

「………ん……ぐう」

「重いよシェゾぉ」

「………う、んー?」


ふわりと優しく漂うレムレスの甘い香りと、近すぎる声。レムレスの吐息がかかる。パチッと目を開けたら、レムレスの顔が真横にあった。どうやらバスの動きに合わせて体も傾き、寄り掛かってしまったらしい。慌てて起き上がったら、クスクスと笑いながら白い指で頬を突いてきた。お返しにと柔らかい頬を摘んで伸ばしたら、奴は俺の頬を突くのも忘れて笑った。アミティとアルルがこちらを見てニヤリと笑い合っているのも知らず、ほのぼのとした光景は繰り広げられる。コソリとアルルが口を開いた。


「これはどう思いますか、アミティさん?」

「いちゃついているようにしか見えませんねぇ、アルルさん」

「ホント仲良しだよね」

「そんな二人にタイトルを付けるならば、《修学旅行はうきうきドキドキ!ラブワールド全開でカモン》ってとこですかね」

「あはは!ラ、ラブワールドて!アミティ最高」


アミティとアルルが腹を抱えて笑う中、バスが一際大きく揺れて止まる。目的地に着いたのだろうか、皆一様にはしゃいだ様子で降りはじめた。何日か分の着替えやら何やらが入った重い鞄をバスから降ろすといった雑用を、レムレスやクルーク達と共にテキパキとこなす。そびえ立つホテルに荷物を運び、一旦落ち着いたところでもう一度バスへ乗った。
只今の時刻は12:35――ようやくこの地に立てたと思ったところで、観光地を回るようだ。俺は修学旅行のしおりをしっかり読んでいないから今後の予定をよく知らないのだが、先頭に立って引っ張っるクルークについていったおかげで迷子にはならなかった。俺の横にはレムレスが居て、その横にはシグと呼ばれるちびっ子が居る。奴の無表情からは何も読み取れないから、どのような事を考えているのか少し興味を持った。


「あ、ヘンタイにーさん」

「変態言うな」

「レムレスにさわらないで、ヘンタイがうつる」

「言ったな、ちっこいの!」

「ちょっと二人とも、僕を挟んで喧嘩しないでよ」


和やかに時が進んでいく。有名な観光名所へ立ち寄り、こっそり立ち食いをして。レムレスの持っているソフトクリームを横から舐めたら、顔を真っ赤にして抗議してきた。シグには後ろから飛び蹴りされてしまい、口からグフェと変な声が出た。純粋に楽しい。高校の一大イベントって言われる理由がわかった気がした。
ふと、レムレスがある喫茶店の前に立ち止まり、それに合わせて俺らも足を止める。キラキラした視線の先には、フルーツとクリームをふんだんに使った超特大パフェ。レムレスの瞳がこちらに向いたが、俺とシグは気付かないように斜め上に視線を泳がせていた。


「ねぇ、見てこれ……!」

「ん?あー、すげぇなー」

「うん、すごいねー」

「ちゃんと見てから言ってよ、もう!僕これ食べたいなぁ……でも時間無いよね、残念」


しゅん、とうなだれる横顔。時計をチラッと見たら、確かに時間が足りないかもしれない。一瞬だけシグと目配せをして、レムレスの頭をポンと撫でる。明日、自由時間があるからその時に来よう。そう伝えた途端、レムレスに輝きが戻った。単純というか、わかりやすいと言うか――なんか可愛い。手の平を奴の頭にまま、くしゃりと髪を崩す。シグが俺の服の裾をクイッ引っ張り「みんなバス乗ってる」と言ったので、慌てて皆の元へと戻った。





修学旅行はうきうきドキドキ!ラブワールド全開でカモン



―――
30000打フリリク企画!
修学旅行とのリクエストを頂いたのですが、過程だけで長くなってしまってあまり深く掘り下げられませんでした……。本当はお風呂とか枕投げとか、次の日の自由時間とかお土産とかも書きたかったのですが……くう!続きはこっそりメインにて書こうかと思っています、すみません><
企画に参加してくださってありがとうございました!


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -