ガランとした薄暗い部屋の中央に、何故か俺は居た。こんな場所知らないし来た覚えもない。俺はどうやってここまで来たのだろうか。謎は深まるばかりで、暗闇に慣れない目には何も映らない。これが一層俺を不安に陥れた。とりあえず立ち上がろうとしたが、体がまったく動かない。足だけでなく、腕や指先さえも。どうしてしまったのだろうか。鈍る思考の中でじっとりと汗が浮かぶ。
不意にガチャリとドアが開く音が聞こえた。誰かの足音が少しずつ近付いてくる度に、俺の息は細かく震えた。もしかしたら殺されるかもしれない。相手がわからないのは、こんなに怖いことだったんだ。しかし俺の予想と反して、声の主はよく知る人物だった。


「手荒な真似してすみません」

「み、か……」

「まだ薬が効いているんですか?」


声が出なくて、掠れた喉を鳴らすことしか出来なかった。前髪をグイと掴まれ、強引なキスをされる。帝人君の舌が絡んできたと思ったらガリと噛まれた。痺れた体は痛みも感じない。口の端からだらし無く唾液が滴り、それを彼の舌が満足そうに舐めとった。
どうして俺は、こんなことに。一カ所だけ深くなった影をぼーっと見つめながら考える。不覚にも帝人君に薬を盛られた、らしい。いつどこでどうして。――思い出せない。ただ帝人君の声だけが響く空間に、俺は抵抗すら出来ないまま閉じ込められてしまったようだ。


「さて臨也さん。あなたはもう僕のものです」

「………な、に……を」

「臨也さんならわかるでしょう?」


帝人君はボールペンを握っているらしく、時折カチカチと鳴る。無邪気な子供の声なのに、俺は何故怖がる。それはきっと、彼の本性に薄々感づいていたからだろう。規則的に鳴っていたボールペンがカチリと止まり、ペン先が出ているまま首筋に当てられた。鈍い痛みに顔をしかめる。出したくても出ない声を無理矢理振り絞るが、やはり息が震えるだけだった。彼は何かを囁きながら耳をベロリと舐め、ペンを持つ手に力を入れた。どちらに対してかもわからないが、つい体が跳ねてしまった。
20を越えた大人が、高校に入学したばかりの子に組み敷かれている。なんて情けないんだ、と我ながら呆れた。朦朧としつつもなんとか保っていた意識が、再びプツリと切れる。完全な闇に包まれた俺には、誰の声も届かなかった。




僕だけの世界観はどうですか



―――
30000打フリリク企画!
帝臨の鬼畜監禁とのリクエストを頂いて、つらつら書いていたら覚醒帝人様になっていました……。鬼畜監禁ネタは書いていてすごく楽しいです。
企画に参加してくださってありがとうございました!



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