寝起きの回らない頭でぼーっと考えてみる。横にはレムレス、その横には片割れ。川の字で寝る、とはこういうことを言うのだろうか。よく親子3人で寝ていることを指す言葉だが――私達は家族でも親子でもないのに、レムレスを挟んで寝ていた。何故だ、何故こうなったのだ。全く思い出せないし、そもそも根本的に何かが間違っている気がする。気のせいだろうか――なら良いのだが。
ペタンと座りながら横で寝ている二人を眺めていても、頭はまだ起きずに緩く回転している。眼鏡を手探りで探したが、なかなか見つからない。寝るときはだいたい枕元に置いているはずなのに……。


「眼鏡……眼鏡はどこだ」

「……ん、うー?」


レムレスがもそもそと起きだし、目を擦りながら「眼鏡?」と呟く。しかし私は周りが見えないうえに、その呟きが聞こえなかった。故に、起き上がったレムレスとぶつかってしまった。互いの頭が容赦無くぶつかり、痛みに顔を歪める。正直、何が起こったのかわからなかった。


「痛っ……貴様………」

「痛いなあ、もう……」


頭をさすり、ぼやけた景色にうっすらと浮かんだ影に目を凝らす。多分、いや絶対レムレスだ。声もシルエットも、合致したから。眼鏡眼鏡、と手探りを再開したら、レムレスも眼鏡を探し始めた。レムレスにしては気が利くじゃないか。
それにしても、片割れはいつまで寝てるつもりだ。ひとりだけ平和に寝息を立てている片割れに苛立ってしまい、つい舌打ちをする。寝起きの悪さは、まあ、自分でも認める。すべてタイミングが悪かっただけだ。


「眼鏡あったよ、シグが持ってる」

「………何?」

「取れないな……あ、れれ?」


片割れがにぎりしめる眼鏡を取ろうとしたのか、レムレスの奮闘する声が聞こえた。どうしたのかと近寄ると、手をパシリと取られた。そして、誰かの手とおぼしき感覚。まさか、レムレス――ではないな、これじゃ手の平が小さすぎる。待てよ、よく考えたらここに居るのは3人だけ。ということは、片割れの手か!握力が強いのか、なかなか離してくれない。眠ってるくせに、とまた舌打ちをしてしまったら、レムレスの優しい声でたしなめられた。


「あやちゃん、シグと仲良くしなきゃ駄目だよ。舌打ちなんて、あやちゃんらしくない」

「ぐ、離せ、この――!」

「みんなで仲良くしようよ、ね?」


片割れと繋がってしまっている手の上から、そっとレムレスの手の平が重ねられる。割れ物を扱うような仕種。急にはっきりした視界で、レムレスが眼鏡をかけてくれたことに気付いた。空いた方の手で眼鏡をくいと押し上げ、唇だけ動かす。レムレスには伝わったのだろうか、ニヘラと緩い微笑みを浮かべた。「もう一度、寝ようよ」と言われ、それからの記憶は途絶えた。多分、また川の字で寝たのだろう。今思えば、なんとも言えない不思議な時間を過ごしたものだ。





みんな仲良しがいいな



―――
30000打フリリク企画!
ほのぼの寄りの紫陽花×レムレスとのリクエストでしたが、シグくん喋りませんでしたねすみません……!×よりも+な感じになってしまいました。三つ巴が、好きです。
企画に参加してくださってありがとうございました!



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -