とある国に、ひとりぼっちのまものが居た。彼はいつでもどこでも、何をするときもひとりだった。しかし、片割れの先祖の血筋を引いているらしいオッドアイの少年はひとりぼっちではなかった。「ともだち」というものが居た。ひとりぼっちのまものは、それがどういうものなのかわからなかった。そもそも、知らないのだ。
まものは書庫で一日を過ごした。知識だけは膨大に増えていく一方、それを役立たせる時がなかった。一方的にどんどん広がる脳内だけでの世界。しかし、専門知識は増えても一般的で簡単なことがわからないまものは、分厚くまとった壁を取り除いたら普通の人間よりも無知だった。
まものは封印されても何も感じなかった。封印を解かれても、何も感じなかった。どちらにせよ、過ごす時間は何も変わらないのだ。ただ、声は聞こえていた。毎日毎日、飽きもせず話しかけてくる変わった人間。それが誰なのか、何のためなのか、まものにはわかるはずがなかった。どうせからかっているだけだろう。飽きたらすぐに消えてしまうさ。


「まものさん、まものさん」

「僕が、まものさんの目になります」

「だから、僕と外に行きましょう」

「まものさん、まものさん」

「お返事、ください」


とても優しい声だった。聞いたことがあるような気がして、でも、ただの勘違いのような気もして。いつしか、まものはその声に耳を傾けるようになった。「まものさん、今日はとてもあたたかいですよ」「まものさん、今日はキャンディを持って来ました」「まものさん、そこに新しい図書館が出来るんですよ」「まものさん、一緒に、行きましょう」
まものは、締め切った薄暗い窓から少しだけ外の世界を覗き込んだ。玄関先には、丁寧に包まれたキャンディが置かれていた。もしもアイツが明日も来たら、顔を出してやろう。




ものと導師



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40000打フリリク企画!レムレス受とのリクエストでしたので、あやレムを書かせて頂きました。早良諸兄さん=あやレムなイメージがあります……!少し表現が堅苦しいですが、絵本のように感じて頂けたら嬉しいです。企画に参加してくださってありがとうございました!



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