レムレス視点。




目を覚ましたら闇が広がっていた。耳をふさいでぎゅっと目を閉じても、闇は広がったまま。ただ、気がついたら夜になっていて、電気がついていなかっただけなのに取り乱してしまった。


「うっ、ああああ!」


発狂、以外のなんでもない叫び声を出す。窓が割れるような音が響くけど、そんなことにも気づかないほど怯えていた。何故か「僕」は強い魔術が使えるらしくて、声に反応して周りのものが壊れていく。部屋の中がぐちゃぐちゃになったけど、僕にはどうでもよかった。


「“僕”は……なに?」


身体はレムレスって人の。じゃあ、僕の意志は誰のもの?何処から来て何処へ帰るの、帰る場所なんてあるの?あと、あのシェゾって人。レムレスって人が好き、なのはよくわかった。でも“僕”を好きな訳じゃない。器が好きで今の僕のことは好きじゃないんだ。


「……優しくなんて、しないで」


結局、なにもかもがニセモノ。僕の存在だって、あるはずないのに。……ああそうだ。“器”がいい人だったんだね。だから優しくしてるんでしょ?そんなの、そんなの……


「いらないよ!」


僕の存在を覚えていてくれる人なんて誰もいない。あいつも、レムレス自身が帰ってきたらそれでいいんでしょう?誰のものかわからない涙が溢れ出して頬を濡らした。自分のか、はたまたレムレスのか。それでも結局、最終的にたどり着くのはレムレスの心。


「ふ……っう…」


声がもれた。誰にも聞かれたくなくて必死に口を押さえた。涙がぼろぼろこぼれ落ちていろんな場所が痛くて。もう嫌だ、優しさに触れるのも、真実を知るのも。


「あっ……うああ――ん」


シェゾに会わなきゃよかった、野原に行かなきゃよかった。そうしたら、こんな気持ちに気づかなかったのに。ううん……うそ。幸せ、だったのかもしれない。嫌だ、嫌だ。忘れられたくないんだ。





らんとし始めた僕の部屋のとある一角。


(あーあ、からっぽだ)

(優しくされなければ、寂しさを知らずにすんだのに)


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