シェゾ視点。




電気……つけなきゃ。風呂にでも入ろうかな。ああでもめんどくさい。あと5分、 5分だけぼーっとさせて。そうしたら動き始めるからさ。あ、でも、やっぱり10分に延長します。なんにもやる気が起きないんだ。部屋にたたずみ、結局30分はぼーっとしていたらしい。気がついたら時間が経っていた。時計を一回見て、何事もなかったかのように目をそらし、もう一度ばっと見た。
なにしてたんだよ、俺。真っ暗な部屋で電気を手探りで探し、パチリとつけた途端に明るくなった。カーテンを閉めようとノロノロ歩く。レムレスを寝かせたままで、帰ってきてしまったが大丈夫だろうか?まあ、レムレスならあのまま爆睡するはずだから心配はいらないな。


「クッション………」


鮮やかな緑のクッションが目に入り、両腕で抱いたまま、ばすんとベッドに倒れる。ふかふかしたベッドが俺を受け止めて跳ねた。


「……レ、ム…レス」


もしかしたら。もしかしたら家を見たら思い出すかも、なんて。馬鹿だな、俺……そんなこと考えてた。


腕の傷はまだ痛い。でも、もう慣れてしまった。そんで………レムレスにも慣れようとしている。そんな自分が、怖くて、憎い。


「あのとき、死んじまえばよかったのかもな……」


こんな俺も、レムレスも。レムレスを残して死にたくないし、残されたくない。わがまま……そう、わがまま。俺は俺を押し付けるだけ。


「はっ……ほんと、嫌んなる」


頬を何かが伝った。暖かい、それから冷たい。なんだよ、なんだよこれ。目を開けたら、抱いていたクッションに水玉模様ができていた。こんなデザインだったかな……いや違う、これは。突然むくりと起きて、風呂入んなきゃと呟く。……やっぱりシャワーでいいや。風呂って気分じゃない。洗い流してくれる、シャワーがいい。
あったけえ……。ざあざあと温かい水が俺を濡らしていく。キュッと止めたら俺の髪からパタパタと雫が落ちた。


「やべ……まただ」


また頬を走る暖かさと冷たさ。景色がゆらゆらと歪んで見える。シャワーをつけ、顔をばしゃばしゃと濡らして乱暴に髪をかきあげる。鏡は曇っていて何も見えない。シャワーを鏡に向け、洗い流したら一瞬曇りが消えた。鏡の中の自分と目が合い、つい笑ってしまった。


「なっさけねえな、お前」


呟いたら、もう一人の俺も同じように呟く。パタリと雫が落ちたが、髪からか瞳からかはわからない。「違う!」大声で怒鳴って、シャワールームから出た。体をろくに拭かないまま、ズボンだけはいてベッドへと向かう。髪から体へと、雫が伝った。





みだなんかじゃない。泣いてなんかない。


(俺は強いんだ………)

(泣くのは、一回でいい…)


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