「二人にちょっとお願いしたいことがあるんです。僕が留守の間、仲良くお留守番をして欲しいんです。いいですか?くれぐれも仲良くしてください」




帝人に言われてしまったら、断る術も見つからず、ただコックリと頷く黒いコートとバーテン服。帝人はと言うと、爽やかな笑顔を浮かべて二人の頬を撫でた。本当は頭を撫でたかったのだがこの身長差のためか届かず、かろうじて届くその柔らかい頬に手を滑らせたのだ。
帝人は個人的な用事のため、数日家を空けなければならない。その間、空き巣やらなんやらが入らないようにするにはどうしたらいいのかと思考回路を巡らせた。達した結論は、二人に留守番をしてもらおうという考えでまとまった。いろいろと考えたが、あっさり決まってしまうほど今の彼らは身近であり、かけがえのない存在なのだ。そして冒頭に至る。彼らが帝人の言葉に純情なのは、帝人の真っ直ぐな愛を不器用ながらも受け止めているからだろう。


「い、いってらっしゃい」

「喧嘩しちゃ駄目ですよ?」

「やだなぁ喧嘩なんてしないよ、帝人君の前では」

「臨也さん」

「ひゃいひゃいごめんらはい」


臨也の頬をむにっと引っ張ったら、ポケットに入れていた両手を降参といったように挙げる。ピピッと鳴る時計を見たら、そろそろ出なければ間に合わない時間になっていたため、慌てて頭をペコンと下げて駆け出した。それをヒラヒラと手を振って見送る二人。静雄の笑顔はガチガチだった、と同時に臨也の表情も引き攣っていた。

(なんで俺がコイツと仲良しこよししなきゃならねぇんだ……ま、まぁ帝人の頼みなら喜んで聞くが、コイツが一緒なんて……殺していいかな)
(なんで俺がシズちゃんなんかと仲良くしなきゃいけないか不思議なんですけど……でも、まぁ帝人君の頼みなら喜んで聞くけど、シズちゃんが一緒なんて……殺していいかな)

互いに違うことを考えているようなそぶりで同じことを考えている。二人の意見が初めて一致した瞬間だった。声には出さず、笑顔を浮かべたまま互いを蹴り合って帝人の家に入る。帝人の生活感が溢れる部屋に、臨也だけでなく静雄までもがついキョロキョロと見回してしまうようだ。臨也は目の端に入り込んだベッドにダイブし、顔を埋める。すんすんと鼻を啜り、寂しがるような表情。静雄はと言うと、クッションの上に大人しく座って臨也の様子を見ていた。


「シズちゃん、来てよ」

「………んだよ」

「帝人君の、匂いがする」

「………………」

「寂しい、なぁ」


つい先程別れたばかりなのに、もう寂しくなった自分がおかしくて、自嘲気味に笑う。静雄も寂しさを感じるのか、天敵の臨也が横になっているにも関わらず、そっとベッドに腰掛けた。しばらくして、臨也のようにごろんと横になる。突然アップになった静雄の顔に、臨也は驚いて目を丸くした。
顔、近い。うるせぇ黙れ。シズちゃんのばーか。何でだよ黙れ。今回だけは喧嘩しないようにしようね。しょうがねぇ一時休戦だな。うん。
ポツリポツリと呟かれる言葉のおかげか帝人の言葉だからなのか、なんと奇跡的にも留守中に大きな喧嘩を引き起こさなかった。二人は我慢することを覚えたのだ。たった数日だとしても、彼らにとっては人間としての大きな成長だった。




「ただいまぁ!臨也さん静雄さんお留守番ありがとうございました」

「み、みかっ、帝人君!」

「お、おかえ、り」

「いい子にしていましたか?」

「聞いて!俺ら喧嘩しなかった!」


帝人がドアを開けた瞬間、黒髪に押し倒されて視界が見えなくなった。苦しいですよ、とモゴモゴ動いてたら、金髪までもがのそりと視界を塞いだ。よほど寂しかったのだろうか、帝人の体に巻き付いた二人の腕がなかなか離れない。驚愕しつつも幸せを感じて、抱き着かれたままヘラッと笑う。今なら身長差を気にせず頭を撫でられる。二人の頭上でポンポンと手を跳ねさせたら、臨也と静雄の瞳がこちらを向き、声を揃えて「おかえり」と言った。










ご褒美をあげる

えーと、臨也さんと静雄さんの温もりが……なんて言うかその、熱いです





―――
僕のペットを紹介します。様に提出させて頂きました。素敵企画ありがとうございました!
わかりにくくて申し訳ないのですが、ここで言うご褒美は頭ポンポンです。


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