?×臨也←を助ける帝人


















キィン、と甲高い音が響いて二本目のナイフが吹っ飛ぶ。あと一本しか残ってないんだけど。つか、なんで?なんで俺こんな目にあってんの?シズちゃんならまだしも、俺なんて関係なくない?ただの情報屋の折原臨也、それだけなんだ、とりあえずまだ何もやっていないから。まあこれからやろうとしてたんだけど、こんなに邪魔されちゃ時間ロスもいい所だよね。


「テメェが折原かあ?」

「…いまさら吐く言葉じゃないよね?脳みそ、ある?」

「っざけんなぁあい!テメェのせいで個人情報の流出が止められなくなって借金押し付けられてんだぞ!」

「それは可哀相に。でも俺の責任じゃないよねぇ、だって覚えてないんだもん」

「あぁ?」

「あのーアレだよ、君はむしゃくしゃしてた。それでいいじゃないか」

「良かねえよッ!責任取りやがれ!!!」


三本目のナイフを手に取る前に、壁に押し付けられる。後頭部をぶつけ、痛みに少しだけ顔を歪めた。目の前の男からは煙草のニオイがぷんぷんしてくるから、余計にしかめっつらになってしまった。相手の隙を見て右手をソロリと背後に忍ばせようとしたが、奴は俺の動きを見逃さなかった。グッと右手を背中から抜け出せないように押さえ付けられ、思うように身動きが取れない。


「ちょ、痛いんだけど」

「テメェの個人情報をさらけ出せ、そしたら全国に流出してやる」

「タチ悪いね、君」

「テメェに言われたく無えが」


ニヤリと歪む唇は、気味悪いったらありゃしない。ああどうしよう。ナイフはもう無いし、利き手は封じられている。左手なんて基本的に使わない、いや使えない。最後に使えるのは、通行人?


「んーと、そうだなあ。大声出して助け呼んでみたり……」

「やれるもんならやってみな」

「じゃあ遠慮なく……だーれかあ!俺、さらわれてる!たすけ……っ……」


親指、を口内に突っ込まれた。ショックで舌がもつれて言う事を聞かず、うめき声しか出なくなった。あ、やばいかも、マジで。えええ俺こんな奴に売られんの?これ以上の屈辱は無いでしょ普通。自由な左手で相手の手を押してもびくともしない。舌を指の腹で押される。痛い。


「そんな女みてえに細い腕で俺を押せるとでも思ったのか?ぁあ?」

「……………」

「あ、あ、あの!」

「…………あ?」


「えーっ、えーっと……や、やあ臨也さん。こんな場所で会うなんて奇遇ですね。さあ一緒に帰りま……」

「帰らせるわけねえだろ?テメェが誰かは知らんがコイツの関係者なら餓鬼でも容赦しねえよ」


一瞬緩む相手の手。その一瞬を突いて口内を支配する指をガリッと噛んだ。反射的に手を引いてくれたおかげで、俺は自由になった。自然な動作でナイフを取り、相手の鼻先に突き付ける。これで俺は逃げられる。ああ助かった。


「もう俺に関わらない方がいいんじゃない?君、どうなっても知らないよ。明日生きていたいなら、今後一切関わるな」

「…………ッチ!覚えてろ!」

「忘れるよ」


ドタドタと重い足取りで逃げていく背を見送り、その場に座り込む。力が抜けた。ああ気持ち悪い。ペッペッ、とやっているとオロオロしていた帝人君がやって来た。彼のおかげでなんとかなった。武器無いと欠点だらけなんだよね、俺。


「ありがとう帝人君」

「い、い、いえ!あああ怖かった」

「すごいよね、ホント」

「臨也さんの声が聞こえて……」

「そう……よかった」


うがいしたいなあ、なんて思っていたら帝人君が遠慮がちにペットボトルを差し出してきた。運良く、ミネラルウォーター。ペコンと一礼して、口をつけては出すの繰り返し。ああ気持ち悪い。帝人君ったら、今度は提げていたビニール袋を目の前に突き出してヘラリと笑った。


「よかったら、口直しに夕飯でも一緒にどうですか?」

「………帝人君が作るの?」

「はい、一応………」

「そっか。じゃあ心配だから教えてあげるよ」

「……あの、臨也さんって料理出来るんですか?」

「俺に出来ない事は無い」


ぶっちゃけ、料理はいつも波江が作る――というか作らせているから作り方なんて解らない。でも、今日はなんだか帝人君の側に居たかった。そういう日があっても、いいよね?















(パターン1で行こう)

………ん、ああ。杏里ちゃんの時と同じ作戦だったんだね


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