ヒュルヒュルパァン。遠くの空で花火が弾ける音がした。ああ、もうそんな季節なんだね。手に持っていたスイカをむしゃりと噛み締める。甘い甘いスイカは、キャンディにしたらおいしいだろうな。
お風呂から上がったシェゾがタオルをわしゃわしゃ動かしながらこっちに来た。うん?僕のスイカが食べられちゃった。せっかく綺麗に食べ進めていたのに、一カ所だけ虫に食われたみたいに深くなっている。あ、虫って例えたらシェゾに怒られちゃった。ごめん、ごめんってば。
ヒュルヒュルパァン。また花火が弾けたみたいだ。シェゾがクイッと僕の手を引っ張った。食べかけのスイカを机に残し、僕らは夏の夜に飛び込んだ。火薬の匂いが風と一緒にやってくる。すんすん鼻をすすったら、花火や草の匂いがいっぺんに訪れてきて、そんな季節なんだなあともう一度思った。


「花火はあっちかな?」

「たぶん」

「湯冷めしない?大丈夫?」

「こんぐらい平気だ」


シェゾの髪からポタリと滴るそれを見て、風邪引かないのかなと少し心配になった。ヒュルヒュルパァン。星が隠れた黒い空を彩る花火は、儚くもすぐに散っていった。ギュッと繋ぐ手の平が冷たい。やっぱり湯冷めしてるじゃないか。強がりの意地っ張り。両手で包んだら、気付いてくれたみたいで小さくククッと喉を鳴らした。表情はわからないけど、たぶんはにかんでいるんだろうなあ。
シェゾが歩き始めた。僕は半歩遅れてついていく。どこ、向かってるんだろう。真っ暗で何もわからないや。たまに照らしてくれる花火も、すぐにどこかへ沈んでしまった。足元も手の平の先も見えない。不安になった。


「……シェゾ?」

「ん?」

「よかった、居た」

「スマン」

「なんで謝るのさ」

「……いや」


急にピタンと止まったシェゾの背中にぶつかった。何が起きたかわからないままとりあえず鼻を押さえていたら、パァンと上がった花火が辺りを照らした。見えたのは、シェゾの背中と向日葵の数々。もしかしたら、僕の見間違いかもしれない。もう一度、もっと大きくパァンと照らされた。揺れる向日葵。たくさんたくさん。
まばたきも出来ないくらいに心を奪われ、息を浅く吸う。こんな綺麗な場所があるなんて知らなかった。どうしてシェゾは僕を――。



「        」



パァンと鳴り響いた花火の音で聞き取れなかった。それでも、シェゾの笑顔と向日葵は目に焼き付いたんだ。もう一度言って、とシェゾの手の平を握りしめる。今度は、彼の言葉がはっきりと伝わった。ぶわっと広がるよくわからない感情で胸がいっぱいになって、不覚にも泣きそうになった。


「誕生日おめでとう」















れは僕への言なんですか)

本当にそう思っていいんですか



―――
レムレス誕生日おめでとう!季節を絡めてスイカ、花火、向日葵畑を背景に書かせて頂きました。来月の25日までフリーですのでお持ち帰りはご自由にどうぞ!報告も任意です。最後までお読みくださってありがとうございました。今年もレムレスが幸せでありますように……!



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