不器用な初恋イメージ







もう何も考えられない。アイスを片手にぼーっとしていたら、溶けたアイスが棒から手に伝った。もう何も考えられない。君のこと、だけしか。あのシェゾが――あのシェゾが、僕を。冗談だよね。え、違うの?ああもう信じられない!僕、今すごく幸せだ。この分なら海をココアに、石をチョコレートに、砂浜をシュガーパウダーに、雲を綿菓子に変えられそうだよ。ああごめん、例え話だからそんなしかめっつらしないで。
冗談、だよね。もう一度呟くとシェゾは顔を真っ赤にして「こんな冗談言わない」と言った。僕の顔もじわじわ静かに熱くなる。初めてだ。人を好きになるのも、人に好かれるのも、好きだと言われるのも。初めて、なんだ。僕は好かれたことがあるなんて自覚をしたことがない。僕も、みんなが平等に好きだった。その“好き”はお菓子の好きと同じかもしれない、と今ならそう思える。
シェゾのことも、そうだと思っていたのに。なんか、ちょっとだけ違かったみたい。シェゾにとっての僕も、ちょっとだけ違かったみたい。ああ恥ずかしいああ恥ずかしい。僕はそんな恥ずかしいこと言えないよ。シェゾはすごいね。


「お、お、お前はどうなんだ、よ」

「……僕は……僕も……ううーん」

「ス、スマン忘れてくれ!あああ忘れてくれええ」


少し悩むそぶりを見せたら、シェゾは頭をかかえてのけ反った。それを見て面白いなんて思う僕は酷い奴だよね。ごめんシェゾ。僕ね、好きなの。君が大好きなの。でも恥ずかしくて言えないよそんなこと。言う勇気だって無いよ。だからこれだけしか言えないけど許してね。


「絶対忘れないよ」


ついにアイスが崩れて地面に落ちてしまった。















(たった一言だけなのに)

言えなかった。
……言えるわけ、ないじゃん。



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