よくある近所のお祭りに、お揃いの仁平を緩く羽織ったシェゾと一緒に来ていた。二人して前髪をピンで上げ、金魚すくいをしては子供のように笑い合い、打ち上がる花火を見ては感嘆の声を漏らしたりと、とても幸せな時間を過ごしていた。
屋台に並んだ風鈴が、チリンと涼しげに鳴る。季節を感じさせてくれるそれに目を奪われ、林檎飴を舐めながらしばらく佇んでいたら、シェゾが団扇をパタパタと扇ぎながら屈んだ。どうしたのかなあ、と思い彼を見ると、割れた風鈴のカケラを集めていた。誰かがぶつかって落としたのか、風の力で落ちたのか。僕も屈んで、シェゾの顔を見る。風鈴を売っているおじさんに拾い集めたカケラを手渡す横顔は、彼が割った訳ではないのに自嘲気味な笑顔を浮かべていた。
僕は静かに林檎飴を舐めて、つい視線を地面に落とした。彼は、異常なほどに「破壊」を拒む。それは、自分であっても僕であっても、はたまた関係の無い他人でも同じことで。なのに――なのに、自分ひとりで苦しみが去るのを待つんだ。僕が、そばに居るのに。こんなに、近くに居るのに。彼なりの不器用な優しさだって、そんなことわかってる。けど、僕だって何も出来ないことがツライんだ。もっと頼って欲しいのになあ。


「……風鈴、買うか?」

「……うん」

「おじさん、風鈴ひとつ」


風鈴を売るおじさんは、人懐っこい笑顔で「好きなの持ってけ」と言った。薄い、ブルーの風鈴。僕これがいいな、と紐を外して、おじさんからもらった箱に大切に大切にしまう。彼みたいな綺麗な風鈴。箱にぶつかって響きを失い、カツンカツンと質素な音を鳴らした。
シェゾの手の下で、金魚がユラリと揺れる。うらやましいなあ、なんて少しだけ思ってしまった。林檎飴がパキンと割れ、あまりおいしくない林檎が顔を出す。さくり、と口に含んだけど苦いだけだった。甘い飴のあとの林檎だから、余計に。















(薄いブルーの囁き声)

……なんか、さみしいなあ



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