飴を舐める、ひたすら舐める。口が寂しいからと言いつつ、本当の理由は笑顔の作り方を忘れたから。だってほら、そういうのって口元でバレちゃうでしょう?それを恐れた僕は隠してしまう、逃げてしまう。ただの臆病者なんだ。でも、そのおかげでみんなの笑顔は守れているの。ここに住むみんなはとても優しいから、僕のことに気付いたらきっと笑顔も消えちゃうと思うから。飴を舐める、ひたすら舐める。


「元気ないけど、どうかしたのか?」

「なんのこと?」

「いや、気のせいならスマン」

「シェゾってば心配性なんだから」


舌先で舐めていた大きな棒付きキャンディを、小さくかみ砕く。それは、パキンと広がり溶けて消えた。僕もこの飴みたいに消えちゃったらいいのに。ああ、駄目駄目。僕はみんなの笑顔を守りたいんだから。それを目標にしたのだから、消えちゃ駄目なんだ。
声をかけてくれた彼とは視線を合わさず、ただひたすらに飴を舐める。歪な形をしたキャンディは見えたり隠れたりと、まるで僕みたいだった。ためしにヘラリとした薄い笑顔を浮かべてみる。あ、出来ちゃった――出来、ちゃった。


「ねぇ、シェゾ。僕は君の笑顔が好きなんだ。だから、そんな顔しないで笑って?」

「笑い方など、忘れた」

「……奇遇だね、僕もだよ」


お互い唇だけで薄い笑顔を作り、一瞬だけパチリと目が合った。逸らしたのは僕の方。また飴を口に押し込み、舐める。初めて口にしてしまった真実。僕は何をしたいんだろう。彼は何を考えているんだろう。ただ、薄っぺらくても偽物でも、彼の笑顔が好きなのは確かだった。
飴、いる?と声をかけてみたら、案の定断られた。甘いものは苦手だ、と。















(偽る側はいつもこう)

君すらもわからなくなっている



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